イベントレポート

ビジネスインストラクショナルデザインによる教え方改革 秋物語 2021 【ノボ ノルディスク ファーマ株式会社様】
メンバー発! ゼロベースで取り組んだ新入社員導入研修の大改革
~研修部全員の想いを込めたBIDグランドデザイン~

ノボ ノルディスク ファーマ株式会社様の人事本部 研修部 セールストレーニンググループは、トレーナー4名中3名はトレーナーになりたて。そのメンバーの皆様が、BID講座を受講され、ご自身でゴールを設定し、ADDIEモデルを回しながら新人導入研修の大改革を行った事例について、山北 美紗子様、髙垣 歩里様、二宮 一敏様、若林 綾様にリレー形式でご紹介いただきました。

改革前

トレーナーとしての力を高める中で浮き彫りになった課題

 

ノボ ノルディスク ファーマ株式会社様は、グローバル本社がデンマークにあり、糖尿病、成長障害、血友病など慢性疾患の治療薬を取り扱っている製薬企業です。2019年の組織再編成の直後は、セールストレーニンググループに所属するのは5名。トレーナー4名中3名がトレーナーになりたてというメンバー構成でした。このメンバーで、新入社員導入研修だけではなく、製品研修、社内試験など、約600名の営業の方を対象とした研修を担っていたのです。当時の状況や、BIDとの出会い、新入社員導入研修の大改革に到るまでの経緯を山北様にお話しいただきました。

山北様 2019年10月にBIDと出会いました。研修設計について体系的に学ぶことで、これまでは、ADDIEモデルのAnalysis、Design、Evaluationが抜けていたことに気づいたのです。「私は何も知らないまま、数ヶ月間トレーナーとして研修をしてきたのだな」と恥ずかしく思いました。トレーナー全員でBID expertを取得してから、早速、業務での実践に移していくことにしたのですが、いざ実践してみると、勉強したからこそ浮き彫りになった課題に直面しました。
 

浮き彫りになった課題
・研修のゴールを示していなかった。
・研修のゴールに対して、アクティビティが足りなかった。
・アンケートを取っても活用できていなかった。

そこで、SLH様にコンサルタントに入っていただいて、各メンバーが担当している研修についてBIDを使って改善していきました。このあたりになると、メンバー間で、共通言語でディスカッションができるようになっていました。また、体系だった研修を作ることで、他部署との連携も密になり、他部署から「きちんと研修を作ってくれてありがとう」と感謝の言葉をいただくことができました。

手応えを感じたメンバーの皆様は、「次は、4ヶ月間という長期にわたる新入社員導入研修のグランドデザインを作りたい」と思うようになったのです。そして、より効果的な新入社員導入研修を目指した大改革がスタートしました。 

改革の始まり

新入社員導入研修の大改革(ADDIEモデルのAnalysisとDesign)  ゴールの明確化

 

新入社員導入研修の大改革にあたり、まず、ADDIEに沿って、過去の新入社員導入研修の課題を抽出していきました。どの段階においても、見直しが必要なポイントが多数見つかりました。まず、Analysisの部分について、髙垣様からご説明いただきました。

髙垣様 全体のグランドデザインとしての大枠を定め直すことから始めました。その中で、最終的なゴールとして、ノボ ノルディスク ファーマにおける一人前のMRとみなす「3年次のありたい姿」を明確にしました。そして、その「3年次のありたい姿」を起点として、グランドデザインを考え、カリキュラムに落とし込んでいきました。

ゼロベース思考で全体像をきちんと考えたことで、新入社員導入研修でどこまで仕上げて現場に配属させると良いかが改めて見えてきました。配属後のフォローアップにおいても、研修部が担うこと、現場のマネジャーの方に託すことの整理ができ、改めて現場との連携の大切さを考えることができました。

続いて、グランドデザインがある程度見えてきた段階で、改めて前年度のカリキュラムの振り返りを行い、見えてきた課題を改善しました。

ベテランのノウハウの継承

新入社員導入研修の大改革(ADDIEモデルDesignとDevelopment)

 

続いて、少人数で効率的に運用していくために、研修計画・研修資材などを整え、随時ブラッシュアップしていける体制を構築することに着手しました。開発にあたっては、ベテラントレーナーのノウハウ継承がポイントになりました。唯一のベテラントレーナーである二宮様からご紹介いただきました。

メンバーの皆様が実施したことは大きく下記の2点でした。

  • 研修アジェンダ、進行用スライド、ワークシートなどのフォーマット化
  • トレーニンググループとして、研修計画・研修資材を蓄積し、ブラッシュアップしていける仕組み化

二宮様 知識教育については、私が唯一多様な経験をしてきたメンバーでしたので、ここではあえて「講義」という言葉を使いますが、講義手順のノウハウの継承が重要な課題といえました。
そこで、研修設計書、進行用スライド、ワークシートなどをフォーマット化しました。その際、ノウハウをBIDの理論に紐づけることを心がけました。このようにノウハウを計画書・資材という形で蓄積することにより、他のメンバーへ伝達・ブラッシュアップしていける仕組みができました。
また、私自身にとっても、BIDの理論を書き添えていく中で、自分のノウハウに納得ができ、自信を持つことができるというメリットがありました。さらに、理論を学ぶ以前に、モヤモヤしていた部分について、理論から考え「何を組み込めば改善できるか」が考えられるようになりました。私のようにトレーナー歴が長い者であっても、BIDは学ぶ価値があるものだと感じました。むしろ、他のメンバーへ「残していきたい」という知見がある方にこそ、BIDは学ぶ意義があると思います。

オンライン化が進み、チーム内でのコミュニケーションが変化しています。より伝達や習得が難しくなる中、二宮様のようなベテランの方のノウハウが可視化し、他のメンバーがメソッドやその根底となる考え方が学べるようになったことは、会社としてもトレーナーになりたての皆様にとっても非常に価値のあることでした。

実施と評価

新入社員導入研修の大改革(ADDIEモデルImplementation・Evaluation)

 

BIDを活用し、新入社員導入研修のゴールとそのルートを計画しました。そして、2021年4月から7月まで、実際に新入社員導入研修を実施。若林様より、実践してみて、「できたこと」と「できなかったこと」と評価についてカークパトリックの4段階評価モデルにならってお話いただきました。

若林様 まず出来たことは、今回のカリキュラム改善の大きな変更点の1つである、外部ベンダー期間中の週1回の自社研修です。計画通り実施することができ、新入社員とのコミュニケーションや会社へのエンゲージメントに繋がるコンテンツを実施することができました。また、疾患製品研修に関しては、単元ごとの「ゴール」や「テーマ」といった短いマイルストーンを設定し、前年度までと比べて多くの投げかけ・質問やクイズなどを取り入れることができました。一方で、それ以外の発表やディスカッションなどといった多様なアクティビティまでは十分に取り入れられなかったという反省はありました。

評価についての見直しも着実に行いました。

 

レベル1 の満足度
研修終了後にアンケートを行いました。BIDを学んだことで、評価方法も含めて設計でき、計画的かつ細かくアンケートを実施することができました。
レベル2の学習到達度の評価
知識・スキル・マインドに分けて評価方法を事前に計画し、実際にその通り実践することができました。これにより、何が課題かが把握しやすくなりました。
レベル3の行動変容
パフォーマンスゴール(①配属領域における製品知識・メッセージを適切に伝えられる。②配属領域における担当先からの質問に対応できる)を設定しており、配属後の現在も配属先の上長を巻き込みながら、個人面談を通して継続して実施しています。

 

このように、チーム一丸となって、ADDIEを活用し、分析から評価までを1回転させました。実施していく中で、若林様には、うまくいかないことや新たに見直すべき課題が見えてきたといいます。2回転目のADDIEを回して、解決をしていきたいと意気込みを語られていました。

来年度に向けて

鳥の目・虫の目での検討が効果的な教育構築につながる

 

BIDを活用したことの成果と2022年の新入社員導入研修に向けた思いを山北様よりお話いただきました。

山北様 今回BIDの理論や型を学んだ上で設計して新入社員導入研修を実施した結果、自信を持って研修を実施することができました。また、設計に沿って計画的に実行したため、明確な問題点と解決策をセットで出していくことができるようになりました。
この2点が私達の大きな成果です。既に他部署にも働きかけ、新たなプロジェクトも動いています。今回得た気づきを2回転目として、来年のADDIEの回転に繋げていきたいと思っております。

また、プロジェクトの最中に、配属となられたマネジャーの藤原様からもコメントをいただきました。

藤原様 私は、2021年3月に研修部セールストレーニンググループに配属となり、4月から新入社員導入研修がスタートしました。手前味噌になってしまいますが、少人数の部署にも関わらず非常によく練られた研修が進んでいます。それは、背景にBIDの知識が根付いているからでしょう。2022年度の新入社員導入研修を一緒に作っていくために、私も新たに27期としてBIDを学んでいます。

BIDの視点で振り返る

専門家×実践家からのコメント

 

まとめとして、弊社森田より、この事例のポイントを説明いたしました。

森田 今回のポイントは、3つです。

1つ目は、鳥の目でしっかりとゴールを見据えて中長期的なプランで立てたことです。3年間かけて一人前に育てるためには、3年次にどういうことができるとよいかを定めて、2年目のゴール、1年目のゴールと逆算して設計していきました。

2つ目は、現状とゴールのギャップを埋めていく施策として、研修部門の皆様が担う部分と現場の直属上長や先輩の皆様に託される部分を分け、どう連携していくかを描いたことです。

3つ目は、4月の入社から7月の配属までの3ヶ月で、新入社員に着実に成長いただくために、虫の目で、インストラクショナルデザインの理論(メリルの第一原理やガニェの9教授事象)をヒントにしながら、具体的にどんなカリキュラムにしていけばよいのかに落とし込んでいったことです。そこにベテラントレーナーからの技能伝承も行われたというのが素晴らしいことですね。

最後に、ゲストの熊本大学大学院 教授システム学専攻教授 鈴木克明先生より、フィードバックいただきました。

鈴木先生 きちんと教科書通りやっている印象です。
今後、どう改善していくかも楽しみです。私からは2つの観点からお話をしていきます。

 

共通言語を持つことの重要性

共通言語を持てると話がスムーズに伝わりますよね。例えば、「ARCSモデルが〜」と話しても、話が通じない人が相手だと、研修のデザインをスムーズに構築していけません。そういう意味で、共通言語を持つことは改めて大事だなと思いました。特に、管理職の方が、部下が使っている言葉がわかるというのは、非常に意味があることだと思います。

学生から社会人にするための研修におけるポイント

MR認定制度改革で、時間制限が撤廃された(「履修主義」から「修得主義」へ変わり、300時間の必須履修時間が撤廃となった)わけですから、この制度改革を活用していけばよいと思います。今は、「3年で一人前になる」と決めていますが、「3年以内で一人前になる」として、できる人は2年目でもどんどん営業に出していく。新人は「7月に配属」となっていますが、「7月までに配属」にすればよい。社内事情で7月に配属が決まっているのであれば、他部署研修の割合を多くしたり、ジョブシャドーの機会を設けたりしてもいいのではないでしょうか。実際に営業に同行するといったこともよいでしょう。「お勉強」から1日でも、1時間でも早く離脱して、仕事をする機会を設けることが、IDの効果・効率・魅力のうちの効率につながると思います。

 

2021秋物語全体のイベントレポート こちら

アッヴィ合同会社事例 こちら