用語解説

ID(インストラクショナルデザイン)とは

効果的・効率的・魅力的な教育を行うためには、教育戦略が必要です。ID(インストラクショナルデザイン)は、研修の効果と効率と魅力を高めるためのシステム的なアプローチで、研修が受講者と所属組織のニーズを満たすことを目指します。

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社会人教育(アダルトラーニング)のポイント

みなさんは、どのような教育観をもって、研修を行われているでしょうか。

私たちは、小学校、中学校、高校、大学と長年にわたる学校教育を受けてきました。ここで受けた教育観というのは非常に根強く、ずっと大人になるまでひきずっていくものだと言われています。

私たちが担っている教育は、企業内で行われる教育です。学校教育と大きく異なるのが、企業教育はビジネスの世界の中の話ということです。最終的には、会社の売り上げにつながり、会社の繁栄、ひいては社会貢献がゴールとなります。

学校教育は、「Just in Case」いつか役立つだろうということを学ぶことが学習の目的と言えます。一方の企業教育は、「Just in time」今行っている仕事に役立つことをタイムリーに学ぶことが求められます。

ですから、私たちトレーナーは、研修をすることが目的なのではなく、研修が終わった後の活動に、どう活かせるのかということを念頭に置いておかなければならないのです。

大人の学びのことをアダルトラーニングと表現します。アダルトラーニングには、一般的には、以下に示すような特徴があると言われています。

  1. 学ぶ必要性を理解しないと学ばない
  2. 大人は、経験がある
  3. 実践的な話し合いの中でより学ぶ
  4. 実利的で役立つものに興味がある

さて、みなさんが実施している社員教育は、これらのアダルトラーニングの特徴を加味した内容になっていましたでしょうか? 社員が現場で抱えている課題を解決するものではなく、子どもの学びの特徴にもあったような「教科中心的」なものになってはいませんか?

社員教育を企画・実施するものは、現場で何が起こっているのか、社員が何を考えて悩んでいるのかを常に意識しておかなければいけないのです。

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効果的・効率的・魅力的な教育を行う

みなさんは、KKDという言葉をご存知でしょうか?

KKDとは、勘と経験と度胸の日本語の頭文字をとったものです。よく「企業の教育担当者は、自分たちの勘と経験と度胸だけで社員教育を行っている」とか、「それじゃ、社員はちゃんと育たないよなぁ……」といったことを耳にします。

ID(インストラクショナルデザイン)は、KKDのみに頼らず、戦略的に教育を設計する際に使えます。

効果的・効率的・魅力的な教育を行うためには、まさに、教育戦略が必要なのです。社員の現状と、あるべき姿(目標)の間にあるギャップを埋めるために、教育を行うのですから、当然そこには戦略が必要です。

IDの日本の第一人者である熊本大学の鈴木克明先生は、
「インストラクショナルデザインとは、研修の効果と効率と魅力を高めるためのシステム的なアプローチに関する方法論であり、研修が受講者と所属組織のニーズを満たすことを目指したものである。」 と、IDを定義されています。

企業内教育も、この3点セットが揃うと、更なる成長が期待できるでしょう。

教育の効果
  • 受講生の実力がつく。
  • 期待に応えるだけの卒業生(修了生)が輩出できる。
  • 自信を持って単位を出せる。
教育の効率
  • 短時間で、無駄なく。
  • 受講者も教育者も省エネ。
  • これまでの投資が活用出来る(例:教材の再利用)。
魅力
  • さらに勉強したいと思うようになる(継続動機)。
  • 楽しい授業、成長の実感。
  • 考えることが楽しい。
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入口と出口を明確にする

IDは、教育の入口と出口を明確にすることからスタートします。

入口とは、学習者の現状のことで、出口とは、学習目標(研修のゴール)を指します。学習目標は現場で求められるパフォーマンスにひもづくように設定し、知識目標、スキル目標、マインドの目標などに分けられます。

また、学習目標を定めると同時に、評価方法を決めておく必要があります。例えば、ある研修の目標が知識習得であれば、知識レベルを評価するためのテストを事前に用意するということです。

これらの入口、出口を明確にしたうえで、その間にあるギャップを埋めるための教育戦略(学習方略)を考えていきます。例えば、どんな教材を使って、どんなやり方(集合研修が向いているのか、それとも自宅での自己学習が向いているのか)で進めるのかといったことを具体的に考えていきます。

そして、これらのことを全て記した「教育の設計書」を事前に描いたうえで、実際に使用するPPTやビデオなどを準備していきます。

※教育の設計書については、こちらの記事でもお話しています。

この際、入口の学習者分析を行った際に、明らかに、入口(レベル)が異なるグループがいくつかあった場合には、(本来は、)それぞれのレベルにマッチした教育戦略を立てておく必要があります。

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インストラクショナルデザイナー(IDer)

ところで、こうしたID理論などを駆使し、教育設計や教材設計を行う専門家のことをインストラクショナルデザイナー(IDer)と言います。

アメリカには、多くの(相当数の)インストラクショナルデザイナーが存在し、企業教育のコンサルタント業務を担っていると聞きますが、日本では、まだ人数が少なく、あまり知られていない存在です。

インストラクショナルデザイナーは、家を建てる時に例えるなら『建築士のような存在』と、お考えください。快適な家を建てるためには、そこに住む人たちのニーズに合わせて建築士が設計図を描き、それに沿って、大工さんたちが家を組み立てていきます。

教育も、まさに同じプロセスが必要なのです。

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ADDIEを回す

教育も当然ながらPDCAを回す必要がありますが、そこでご紹介したいのが、IDの最も基本的なプロセスモデルであります、ADDIEモデルです。

ADDIEとは、分析Analysis設計Design開発Development実施Implementation評価Evaluationの5つの頭文字をとって、ADDIEモデルと言われています。

  • 分析フェーズ:まず現状分析を行い、何を教育するのか、教育の評価基準の策定などを行います。(研修が必要かどうかも含めて判断し、研修以外のアプローチも同時に検討することが重要。)
  • 設計フェーズ:教育の設計図を描き、どんなプログラムを実施し、どんなコンテンツを用意 すべきかを見極めます。
  • 開発フェーズ:設計図(計画書)に沿って、教材を作成します。この際、既に販売されている書籍や、よくまとまったWebサイトなどがあれば、それらを有効活用することも検討します。
  • 実施フェーズ:実際に研修を実施します。
  • 評価フェーズ:研修の計画内容そのものや、教材、講師などの評価を行い、次のプロセスに向けて、改善をはかっていきます。

ビジネスの世界では当たり前のPDCAサイクルですが、教育の世界では、このプロセスが上手く回っていないことの方が多いのです。特に、分析、設計、評価のフェーズが欠けていると言われています。

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BIDとは

ID(インストラクショナルデザイン)は、戦略的に研修効果を高めるための教育設計の理論です。しかし、ビジネスの世界では、研修設計が完璧であっても、成果につなげるためにもう少し踏み込む必要があります。そこで、HPIPMといった概念が必要になってくるのです。

私たちは、IDにHPIとPMを加えた独自のメソッドBIDを用いて、行動変容につながる仕組みづくり、ヒトづくり、モノづくりをご支援しています。

※本ウェブサイトでは、BIDを「ビジネスID」「ビジネスインストラクショナルデザイン」「Business Instructional Design」とも表記しています。

 

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