コラム

【MR白書解説】
2026年制度改定とOJT強化のカギを握る
「ワークプレイスラーニング」とは?

公益財団法人 MR認定センターが毎年発行する『MR白書』は、製薬業界が直面する喫緊の人財育成課題と、その解決に向けた新たな方向性を鮮明に示唆しています。
最新の『2025年度版白書』が明らかにしたのは、MR数の継続的な減少トレンドと、2026年度の認定制度改定を目前に控えた「現場で真に貢献できるMR」育成の質的転換の必要性です。

貴社では、「患者志向に立った医薬品情報の提供、収集、伝達活動を通じて、医療関係者から信頼されるパートナーを目指す」「現場で真に輝き、成果を生み出すMR」を育成するための具体的な戦略を確立されていますでしょうか?
変化の激しいビジネス環境において、効率的かつ実践的なMR育成は、企業の持続的な成長と社会貢献に不可欠です。

本コラムでは、『MR白書』が示す製薬業界の教育課題を深く掘り下げ、貴社のMR人財育成を成功に導くための具体的なアプローチをご提案します。

※MRとは、Medical Representafiveの略で医薬情報担当のこと。
※本コラムは、公益財団法人MR認定センターウェブサイト「2025年版MR白書」より引用させていただいております。

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『MR白書』が警鐘を鳴らす 人財育成における「3つの壁」

現状認識:MR数の減少と2026年制度改定が突きつける課題の深刻化

 『MR白書』は、2022年度に約20年ぶりにMR数が5万人を割り込み、2024年度版では過去最大の減少率に次ぐ減少幅(2023年度比6.6%減)4万3千人台にまで落ち込んでいることを示しています。この急速な減少は、「医薬品の適正使用の推進体制」や「安全性情報の収集」という企業の責務を果たす上で、十分な体制を維持できるのかという重大な問いを業界に投げかけています。
さらに、2026年度に施行される新しいMR認定制度では、実務教育における成果確認が「実地」で行われることが強く求められます。これは、単なる知識習得に留まらない、MR一人ひとりの実践的資質の向上が喫緊の課題であることを意味します。
これらの背景を踏まえ、私たちは製薬業界のMR人財育成を阻む以下の「3つの壁」に注目しています。

【本人の壁】「自律性」と「受け身」の狭間で揺れるMR
MR認定制度における基礎教育は原則としてMR個人の学習に委ねられ、MR学習ポータルを活用した自主学習が中心となっています。しかし、白書では「実施する必要性が浸透しておらず、基礎教育年次ドリルを実施することすら意識していないMRがいる」、「受け身の学習姿勢を招いている可能性」が指摘されています。

これは、MRが自身の成長を「自分事」として捉え、実践と振り返りを通じて成長する『学び続ける力』=『経験学習マインドセット』の欠如を示唆しています。
私たちが多くの企業様とご一緒する中で感じるのは、「学び方」や「振り返りの仕方」というものは、学校教育では体系的に教わる機会が少なく、また会社でも「自律」という言葉のもと本人任せになってしまいがちであるため、意外と盲点になっているのではないかということです。

生成AIの活用など、今後さらに高度な「自律的学習」が求められる中で、このマインドセットの欠如は、変化への適応遅れと長期的な競争力低下に直結しかねません。
貴社のMRは、与えられた学習をこなすだけでなく、自ら課題を発見し、成長を加速する「学び続ける力」を育んでいますか?

【上長の壁】OJTは「心許ない日数」から脱却できるか?
実務教育において「技能教育」に力を入れている企業は多いものの、白書はOJTの年間平均日数が「3日以下」が最多であり、「MRの育成、成長を促すには心許ない日数」と厳しく指摘しています。

さらに、現場の上司の方々は、中間管理職としてプレイヤーとしての実績も求められ、部下の育成にも奮闘されていますが、「MR直属の上長のリソース不足」や、部下の「成果確認はMR直属上長の役割であるが、その評価の目線にばらつきが生じてしまう」といった、OJTの質と量の両側面での課題が顕在化しています。
そして、2026年度のMR認定制度改定では、「実務教育における成果確認を『実地』で行うこと」が強く求められることになります。

このような状況で、上司の方々にだけ「OJTを強化せよ」と負荷をかけるのは酷でしょう。私たちは、上司が部下の成長を効果的に支援するためのスキルとツールの整備はもちろんのこと、本社部門や教育担当者が周囲からしっかりとバックアップし、上司の育成負荷を軽減しながら、質の高いOJTが実現できるような仕組みを構築することが喫緊の課題だと考えています。

貴社のマネージャーは、部下のOJTを単なる業務指導で終わらせず、周囲の適切なサポートを受けながら、個別最適化された学習支援を通じて、実践的な成果へと繋げられていますか?

【組織・環境の壁】Off-JTだけでは限界?
MR数の減少が進む中、「医薬品の適正使用の推進体制」や「安全性情報の収集」という企業の責務を果たすためには、限られたMRで最大の成果を出す必要があります。
しかし、白書からは「現場の事情を汲み取り、対話することで的確な情報提供をしてほしいとのニーズが垣間見える」といった、医療関係者の期待と現在のMR活動のギャップが示唆されています。

このギャップは、研修(Off-JT)に偏りがちな従来の教育体制ではカバーしきれない、「職場での実践を通じた学び(ワークプレイスラーニング/WPL)」の環境整備が遅れていることに起因します。
企業は「漠然とした将来像」「学習時間確保の困難」「学んだことの検証方法」といった悩みを抱え、個々の職場の特性に応じた職場学習環境の設計・推進が喫緊の課題です。

貴社の現場では、形式的な研修だけでなく、日々の業務そのものを「学びの場」へと変革し、自律的な成長を促す「職場学習プラットフォーム」を構築できていますか?そして、その重要性を認識した上で組織長はバックアップされていますか?

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「現場で輝く MR」を育成するための包括的アプローチ

私たちは、長年にわたり多くの製薬業界のお客様と伴走し、その課題解決を支援してまいりました。
効果的・効率的・魅力的な研修をデザインする独自メソッド「ビジネスインストラクショナルデザイン(BID) と、現場での実践を通じた学びを最大化する「ワークプレイスラーニングデザイン(WPLデザイン) という二つの強力なアプローチで、 MR 人財育成を根本から一緒に見直しをさせていただき、MR が「医療関係者から信頼されるパートナー」として持続的に成長できる仕組みづくりをご支援しております。

私たちが提供する具体的な支援は以下の通りです。貴社の固有の課題や状況を深く理解した上で、最適な介入策を組み合わせたオーダーメイドのグランドデザイン を描き、その実現まで一貫して伴走いたします。

  • MR 本人の「経験学習マインド」醸成支援
    MR一人ひとりが「学び続ける力」を育み、成長できるよう、経験学習サイクルを効果的に回すためのマインドセットと具体的な振り返りの方法を習得する支援を行います。これには、ワークショップ形式での学びの機会の提供や、自律的学習に不可欠なツールの導入コンサルティングなどが含まれます。

  • 上司の「学習支援力」向上支援
    OJTの質と量を高め、マネージャー陣が部下の「経験学習」を効果的に促進できるような学習支援スキルの向上を総合的に支援します。具体的なツール開発および実践的なワークショップの実施など、状況に応じた複合的なアプローチをご提案いたします。

  • 組織全体の「職場学習環境づくり(WPL推進)」支援
    企業文化や各エリアの特性を深く理解した上で、最適な学習環境を設計し、現場の皆様とともにWPL推進の文化が醸成される仕組みづくりのプロジェクトを支援いたします。

  • Off-JT の「質的向上」支援
    教育担当者が、効果的・効率的・魅力的な研修を自社で設計・実施できる能力開発を支援します。
    コンサルティングや「トレーナーズ・トレーニング」 の提供を通じて、成果に直結する質の高い教育を継続的に創出できる体制づくりをサポートいたします。
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学びの90%以上を占める「職場学習(ワークプレイスラーニング)」

現在のビジネス環境において、職場環境や職場学習を最適化し、従業員の能力を最大限引き出すことは簡単なことではありません。

これまで私たちは、研修を効果的・効率的・魅力的にするための手法である「インストラクショナルデザイン」の考えに即し、従業員が実務や組織の目標にどうしたら貢献できるようになるかを考えてきました。
しかし、最適だと考えられる研修を組み立てて実施したとしても、期待するパフォーマンスに至るまで能力を向上させることの困難さも感じてきました。

それは、「学びの全体像」を100%とした場合、「研修での学び」はわずか10%程度に過ぎず、90%以上を占めるのは「職場学習/ワークプレイスラーニング」にほかならないからです。
多くの研修担当者がぶつかるのが、この「職場学習」の壁です。
加えて、この重要な「職場学習」について、誰が責任を持っているのかが不明瞭(もしくは、現場に任されており属人的)なのです。

そこで2024年2月に「自ら学び未来に活躍する人財が育つ WPL3.0 ~ ワークプレイスラーニングの理論と実践」を発行させていただきました。
「なぜ職場学習が重要なのか」「職場学習とは何か」「職場学習を促進する機能とは何か」「職場学習が起こる現場とはどのような場所か」「どうやって職場学習を推進するのか」を多角的に探求します。

実践的な戦略を立てるための理論と具体的な手法を学ぶことで、組織内で素敵な職場学習が行われる環境を築いていただけるように願っています。

文責(森田 晃子)

参照:『WPL3.0 ~ワークプレイスラーニングの理論と実践~』 森田晃子ほか著、ディスカヴァー・トゥエンティワン


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漠然としたお悩みからでも、具体的な課題を明確化し、貴社に最適な解決策をご提案いたします。

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