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イベントレポート
「研修/訓練の効果が見えにくい」「しっかりと品質担保したい」「どのようにしたらスキルを高められるか」悩んでいる。AIの進化で対人スキル等の価値が高まる中、多くの教育担当者がこうした課題を抱えています。実はその最先端の答えが、航空業界にあります。パイロット育成では、曖昧なノンテクニカルスキルを「できるようになった行動」として可視化し、「CBTAプログラム」×「ISD」という理論で科学的に教育を設計します。本記事では、このアプローチをあらゆる業界の「成果につながる教育」へ応用するヒントを、セミナー登壇内容を元に詳しく解説します。
目次
セミナーの概要と背景 なぜパイロット育成なのか? CBTAとは?── "成果につながる育成"を可能にする枠組み ISDとは?── CBTAを支える“科学的な教育アプローチ” 体験ワークと現場の反応 編集後記CBTA×ISDの応用可能性──すべての業界の育成へ2025年2月7日、公益社団法人 日本航空機操縦士協会が主催する「第22回 小型航空機セーフティセミナー」にて、当社コンサルタントが「これからの操縦士育成 ~CBTA プログラムと ISD の基礎~」をテーマに登壇しました。
【開催形式】
対面・オンラインのハイブリッド形式 130名程度
【参加者】
小型航空機のパイロットおよび教育指導者等
【Agenda】
❶CBTAプログラムの基礎
❷ISDの基礎
❸コンピテンシーを活用したノンテクニカルスキルのアセスメント体験
【講師】
篠田梓(サンライトヒューマンTDMC株式会社 ラーニングプロセスコンサルタント)
当社では、過去7年間にわたり、エアライン向けにCBTAプログラム導入に伴うISDの活用支援をしてきました。今回のセミナーでは、その知見を活かし、小型航空機分野でのISD活用の可能性について提言いたしました。
一見すると航空業界に特化したテーマのようですが、本質的には「成果につながる育成とは何か?」という問いについて考えるセミナーです。本レポートでは、そのエッセンスを整理してお届けします。
「研修を実施しても現場の行動が変わらない」──これは業界を問わず、多くの教育担当者が直面している課題です。航空業界、とりわけパイロットの育成にも、かつては同様の悩みがありました。
以前のパイロット教育は、主に操縦技術(テクニカルスキル)の習得・評価に重点を置いており、テクニカルスキルの能力は十分に発揮されていたといいます。しかし、近年の事故・インシデントの多くは、ヒューマンエラー、特にノンテクニカルスキル(状況認識、意思決定、対人関係スキルなど)に起因しており、ノンテクニカルスキルの更なる習得が課題となっていました。ちなみに航空業界では、これらのスキルを育成する訓練は「CRM(Crew Resource Management)訓練」として体系化されています。
これを受けて登場したのが、CBTAプログラム(以下、CBTA)です。これはテクニカルスキル/ノンテクニカルスキルスキルを含めて「行動できること」を育成と評価の基準とし、訓練と審査(評価)を一貫して設計する仕組みです。CBTAを支える教育の設計理論がISDであり、ISDはCBTA導入時の前提として必要な理論となります。
一般企業においても、マニュアル化やAIの進展によりテクニカルスキルは代替可能となりつつあります。その分、対人関係スキルなど、ノンテクニカルスキルの重要性が高まっています。CBTA×ISDは、まさにこうしたスキルを効果的に育成するための有力な手法と考えます。
CBTAプログラムでは、必要な知識・スキル・態度を「コンピテンシー*」として明文化し、それに基づいて訓練と審査を設計します。
従来の「一定時間の研修を終えたら合格」という時間ベースの育成ではなく、「望ましい行動ができるようになったか」を育成の成果として捉える点が特徴です。これにより、以下のような転換を図ることができます。
このアプローチは、航空業界にとどまらず、あらゆる職種・業種に応用可能ではないでしょうか。「どのような行動ができるようになればよいのか」が定義されないまま、必要そうな研修だけが実施され、成果の確認もされないまま実践に移される──そんな状況をしばしばお見かけします。
営業職や管理職の育成においても、「なんの研修を実施するか」ではなく、「何ができるようになるか」を起点に逆算して教育設計することで、育成の質が飛躍的に向上するのではないかと考えます。
*コンピテンシー:ハイパフォーマーに共通して見られる行動特性のこと

ISDは、学習者の現状と目指すべき姿のギャップを埋めるために教育を設計する理論です。
CBTAプログラムは、受講者の能力や組織の状況に応じた柔軟な設計が求められるため、属人的な教育企画では対応が難しくなります。
そこで、ISDの考え方が不可欠となります。CBTAをISDの考え方に適応させると以下のような概要になります。
エアラインではCBTA導入のためにISDを導入する流れからスタートしていますが、教育の出入口を決めて、そのGapを埋めるHowを考えるということは、CBTAの導入の如何に関わらず必要であるという認識が広まってきています。
一般企業においても、求められる人材像を明確にし、現状とのギャップを把握し、それを埋める研修を設計するという考え方は非常に有効です。
たとえば管理職研修であれば、「どのような行動ができるリーダーを目指すのか」をあらかじめ定義し、受講者の現状を評価したうえで、重点的に伸ばすべき行動をターゲットとした教育プログラムを設計します。
ISDは、こうした“行動を起点とした育成の体系的に設計するためのフレームワークであり、再現性のある育成を目指す企業にとって、導入すべき基本の考え方のひとつと言えるでしょう。
セミナーでは、参加者に「ノンテクニカルスキルの自己評価ワーク」を体験していただきました。
これは、ICAOが示す10のエアラインパイロットコンピテンシーのうち、特に小型機にも関係のあるスキルを選択し、自身または周囲の優れたパイロットを想像してアセスメントを行っていただきました。
共有された声の一部をご紹介します:
●テクニカルスキルについては明文化されていたが、ノンテクニカルスキルについては明文化されていないので、どのように評価するか疑問に思っていた。
●これまでの「状況認識」や「意思決定」については意識していたが、どのような行動ができていればよいのか明文化されると大変ありがたい。
参加者からは、評価制度設計や教官間の評価の平準化などに関する質問も多く寄せられ、関心の高さが伺えました。
一般企業でも以下のようなお悩みはもちではないでしょうか?
これらの課題に対して、CBTAプログラム×ISDの考え方は、解決のヒントになると考えます。
CBTAやISDは、航空業界のためだけの教育体系ではありません。むしろ、「研修をやっても効果が見えにくい」「現場で成果が出ない」といった悩みを抱える企業にとって、“教育の再設計”を行うためのヒントとなります。
「成果に結びつく教育」を実現するためには、単に研修を提供するだけではなく、目指すべき姿の設定、評価の仕組み、現場との接続性を含めた全体設計が必要です。
サンライトヒューマンTDMCでは、業種や職種に応じた“成果につながる教育”の設計のご支援をしています。教育の見直しや新しい仕組みづくりにご関心がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
▼公益社団法人 日本航空機操縦士協会パイロット誌のバックナンバー
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