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イベントレポート
2025年6月6日に開催されたLPDカンファレンス2025。
今回は、企業内教育の成果創出に欠かせない「Business Instructional Design(BID)」セッションのハイライトをお届けします。
弊社が提供する「ビジネスID講座」も今年で10年目を迎え、BIDは様々な組織に着実に浸透しています。
しかし、研修を単なるイベントで終わらせず、現場のパフォーマンス向上へと確実につないでいくには、今の人財育成の潮流を反映した新たな視点とアプローチを加えていく必要があります。
当日は、BIDの原点に立ち返り、「“現場での実践に活きる研修”デザインとは何か」を深く掘り下げました。
企業の人財育成ご担当者様、経営企画ご担当者様にとって、新たなヒントがきっと見つかるはずです。
※LPD=Learning Process Design

目次
導入|人財育成に成果が求められる今、BID活用の外せないポイント 特別講演|武蔵野大学 鈴木 克明氏 「人財育成神話からの脱却!どの視座でデザインするか?」 事例発表|ほけんの窓口グループ 清田 直文氏 「ライフパートナーとマネジャーの学びのグランドデザイン~経営と現場をつなぐ」 コンサルタントの視点|あらためて私たちが考えるBID実践の3つのポイント あとがき冒頭では、サンライトヒューマンTDMCから、企業内教育の成果創出に欠かせない「BID(Business Instructional Design)」の原点である、“HPI(Human Performance Improvement)×ID(Instructional Design)×PM(Project Management)”の掛け算の重要性をあらためてお伝えしました。

「研修や育成施策が現場のパフォーマンス向上につながらない…」
「教育コストばかりがかさんで、効果が見えづらい…」
このようなお悩みをお持ちの教育・研修ご担当者様は少なくありません。では、なぜパフォーマンスに繋がらないのでしょうか?
私たちからは、IDの視点で研修そのもののデザインに力を注ぐあまり、HPI(人財パフォーマンス改善)とPM(プロジェクトマネジメント)の視点不足に陥っていないか?という問いをお示しさせていただきました。
現場のパフォーマンスを変革するには、“HPI×ID×PM”の掛け算で経営戦略と現場を強力につなぐ必要があります。
この後は、この観点を軸に、ID専門家による特別講演、そして、BID実践者からの先進的な事例発表へと展開していきます!

インストラクショナルデザイン(ID)の第一人者である武蔵野大学の鈴木 克明先生からは、「人財育成神話」にとらわれず、Why(なぜその施策を行うのか)という“上位の視座”でデザインする重要性が発信されました。

9つの問いで構成される「人材育成神話*」に関するアンケート結果からも、研修が「イベント」や「コスト」とみなされる段階は脱却しつつある一方で、育成における教育部門の「役割」「提供すべき価値」に関する認識や創出については、まだまだ課題が多いことが浮き彫りになりました。
教育部門は教育や育成の単なる請負部門ではなく、企業価値創出の根幹に関わる存在であるべきなのです。
※「人材育成神話」引用元 鈴木克明(2014),熊本県経済同友会人材育成セミナー資料
育成デザインにおいても経営的観点は必要です。
皆さんは、バランススコアカードに基づく「戦略マップ」や「人材開発バリューチェーン」といったフレームワークを活用していますか?
こういった視点を持ち、研修等を通じた社員の行動変化が、いかに業務改善、顧客満足、ひいては財務成果へとつながるかというストーリーを描き、経営者と対等に対話できるようになってほしい。
そのためにも、まずは人財育成のトータルデザインを行う必要があるのです。
ここまでに鈴木先生がお話してくださった「上位の視座」「戦略的デザイン」というコンセプトは、この後のほけんの窓口様の事例の理論的背景として見事につながっていきます!

貴重な事例をご提供くださったのは、ほけんの窓口グループ 人財開発本部 清田 直文様。
店舗現場の育成課題に対する、具体的かつ戦略的な取り組みをご紹介いただきました。
(ご発表後には、清田様、鈴木先生と弊社コンサルタントを交えたトークセッションも実施いたしました)。
同社は「優れたサービスを提供する“人”こそが商品」というビジネス背景の下、人財育成を競争力の源泉と明確に位置づけています。
清田様からは、現場と教育部門の“分断”を克服し、成果に直結する教育を実施するために、BIDのフレームワークを活用した育成のグランドデザインを構築し、推進している最中であることが語られました。
このデザインにあたっては、「店舗が成果を出すために必要な人のパフォーマンスは何か?」という観点で全体を俯瞰。
最前線に立つライフパートナーが期待するパフォーマンスを発揮することを特に重視し、人、仕組み、様々な側面から現状と必要な対応を徹底的に分析したそうです。
また、店舗内で学びのサイクルが機能しているモデルケースの分析も参考に、マネジャー層の育成力向上を重要な課題として定義されました。
最初の取り組みとしてデザインされたのは、ブロック長研修です。
経営層の承認を得るために、教育企画書を活用してビジネスとパフォーマンスゴールのつながりを徹底的に考え抜き、ロジカルに説明することで説得力のあるプレゼンを実現したとお話いただきました。
その過程では、各層のマネジャーとの対話など、現場との密なコミュニケーションプロセスも並行して行われたとのことです。

ほけんの窓口様のグランドデザインは、ブロック長研修に加えて、店長や次世代マネジャーを対象とした研修、さらには評価基準の明確化など、教育以外の施策も含めた広範なスコープで描かれ、具体的な展開ロードマップも策定されています。
また、ご自身たち教育部門のケイパビリティ向上や、教育部門と現場メンバーがともに人財育成に取り組むことで、現場メンバーの育成スキルを習得する場を創出するという試みにも挑戦されているそうです。
ほけんの窓口様の事例は、鈴木先生がお話された「上位の視座」や「戦略的デザイン」という考え方が実務において実行可能であること、また、実行した場合に得られる効果について、私たちに示してくださいました。

特別講演と事例発表を受け、最後に弊社から、改めて「真に成果につながる人財育成」を実現するためのBID実践のポイントを3つの視点からお伝えしました。

そもそも、ビジネスの観点からどんな人財パフォーマンスが必要で、そのパフォーマンス発揮に必要なことは何か?という問いから深く考えます。

過去の企業内教育では、戦略は重視されず、感覚で物事が進むことも多々ありました。
しかし、この風潮は変わりつつあります。誰もが納得できるロジックを目に見えるように組み立てなければ、人財育成への投資判断がなされない世界になってきています。
ほけんの窓口様の事例では、ビジネスから現場パフォーマンスまでのつながりが非常にわかりやすく説明されていました。
鈴木先生もお話されていたように、組織戦略のうち、“人の成長”のゴールを担うのは、教育や研修などをトータルデザインできる育成・教育部門です。
経営と現場を“人”を軸としてつなぐ。これは、「上位の視座」で俯瞰して考え、「戦略的デザイン」の土台を作ることから始まります。
目指す人財パフォーマンスを実現するために、描いたプランを動かすためのマネジメントプロセスをデザインします。
BIDでは、研修プランという静的なデザインに留まらず、成果創出に至るまでの「動かし方」、つまり動的なデザインも重視します。ここで特に重要なのが「現場」との密なコミュニケーションプロセスです。
ほけんの窓口様の事例では、経営層への説明はもちろん、現場メンバーとのコミュニケーションを非常に丁寧に実施されていました。マネジャーさんの声をききに行ったり、現場を見に行ったり、などがこれにあたります。
よく、本社と現場の分断が問題視されますが、この分断を乗り越えるためには、教育部門が現場にどれだけ踏み込めるか、現場のマネジャーやメンバーとどれだけ密なコミュニケーションを取り、共に考え、共に動くことができるかが鍵となります。
この実践的なプロジェクトマネジメントの視点こそが、絵に描いた餅で終わらせない、真に現場で成果につながる人財育成を実現します。
最後に、ID(Instructional Design)の視点です。
ここでいうIDは、単に研修コンテンツを設計する狭義のIDに留まりません。人財パフォーマンスを発揮するために必要な「働きかけ」全体をデザインする、広義のインストラクショナルデザインを指します。
鈴木先生の特別講演では、「人材育成神話からの脱却」として、研修という「イベント」だけで人財育成が完結すると考えることに対して警鐘が鳴らされました。
ほけんの窓口様では、まさに広義のインストラクショナルデザインが実践されていて、研修だけでなく評価基準の明確化など、教育以外の施策も含めたグランドデザインが描かれていました。
つまり、現場のパフォーマンスを最大化するためには、研修、OJT、コーチング、ナレッジマネジメント、評価制度、キャリアパスなど、様々な「働きかけ」を有機的に設計し、人や組織の行動変容を促すデザインが必要なのです。
これが、私たちが考える広義のインストラクショナルデザインの実践であり、BIDの中核をなす要素です。
この考えは、次のセッション「ワークプレイスラーニングデザイン WPLデザイン」へとつながっていきます。
LPDカンファレンス2025におけるBIDセッションのレポートは以上です。
本セッションを通じて、「現場での実践に活きる研修」デザインには、BIDの原点であるHPI、ID、PMの掛け算が不可欠であり、特にビジネスと人財パフォーマンスの明確な接続(HPI)、現場を巻き込む実践的なプロジェクトマネジメント(PM)、そして働きかけ全体をデザインする広義のインストラクショナルデザイン(ID)の視点が重要であることを改めて確認できました。
サンライトヒューマンTDMCは、これらのBIDの考え方を基に、貴社の経営戦略と連動した人財育成の設計から実行、そして成果測定までをトータルで支援するコンサルティングを提供しています。
単なる研修の提供に留まらず、貴社の組織文化や現場の実情に深く寄り添い、真にパフォーマンス向上につながるソリューションを共に創り上げてまいります。
この記事をお読みいただき、貴社の人財育成に関する課題解決や、より戦略的な人財開発にご興味をお持ちいただけましたら幸いです。
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