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イベントレポート
12月1日に開催されたラーニングイノベーション2020にて、弊社森田とインストラクショナルデザインの第一人者である熊本大学大学院 鈴木克明教授とで、「アウトプットをデザインする~ニューノーマル時代の企業内教育~」をテーマに講演をしました。
新たな時代の研修を考えるヒントをお届けします。
目次
コロナ禍におけるインストラクショナルデザイン IDの設計に必要な視点①「ゴール」 IDの設計に必要な視点②「評価」 IDの設計に必要な視点③「方略」 ニューノーマル時代のIDトピックス (参考動画)本セミナーは、鈴木先生によるインストラクショナルデザイン(ID)の説明からスタートしました。
鈴木先生:教えなくてはいけない状態ということは、学ぶ人が目標のレベルにいない、つまり、「現在」と「目標」の間にギャップが存在するということです。IDでは、このギャップを埋めるために、研修などの手段をどう使っていくかを考えます。
森田:出口(目標)と入口(現在)のギャップを戦略的に埋めていくということですね。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、研修の再設計が必要になり苦労されていると企業様も多いことでしょう。しかし、この状況を変革を起こしやすくなったとポジティブにとらえることもできるかもしれません。
鈴木先生:教育の世界は前年踏襲が多いですが、コロナ禍で前年と同じことができなくなったということはある意味でチャンスですね。
次に、IDの設計に必要な「ゴール」「評価」「方略」の3つの視点についてご紹介しました。1つ目はゴールです。
鈴木先生:教育は、「何を教えるか」というインプットではなく、「何ができるようになるか」というアウトプットを中心に設計します。インプットは、話を聞く、本を読む、動画を観る、製品知識を覚えるなど。アウトプットは、対話する、質問に答える、報告書を作る、製品説明をする、新製品を創るなどです。大事なポイントは、アウトプットに必要なインプットを考えるという逆向き設計です。
また、「基礎から応用」ではなく、「応用から基礎」の順で進めることも重要です。実務レベルの応用問題から始めると、足りていない問題点が見えてくるからです。
IDの設計に必要な視点の2つ目は評価です。
森田:ゴールの考え方とセットになるのが、達成したかどうかを測る評価です。
鈴木先生:評価については、「カークパトリックの4段階評価モデル」があります。
レベル1 反応 → 受講者アンケートの内容です。
レベル2 学習 → 研修で目標にした知識やスキルを身にけられたかどうかです。
レベル3 行動 → どのように仕事に活かしたかです。
レベル4 結果 → レベル3の行動の結果が、企業の経営に寄与したかどうかです。
4つのレベルのどの段階について話しているのかを明確にする必要があります。
IDの設計に必要な視点の3つ目は方略です。
森田:出口と入口のギャップを埋める方略については、100種類以上のフレームがありますが、ここではそのうち2つをご紹介します。
鈴木先生:いわゆる「お勉強」だけで終わらせないためにオススメなのが「メリルの第一原理」です。
1)→5)を繰り返すことで、レベル2(学習)とレベル3(行動)を自然に連結させることができます。
森田:”いきなり「課題」にチャレンジしても難しくてできないので、「例示」からスタートしてもよいですか”と相談されますが、いかがでしょうか?
鈴木先生:「例示」からスタートすることは、答えを先に教えているようなものです。まずは、挑戦させてみることが重要です。すでにできるようであれば教える必要はないと判断できるので、効率化にも繋がります。
もう1つのフレームは、「コルブの経験学習論」です。(ページ下部に補足動画がございます)
経験学習モデルでは以下の4つの活動を繰り返していくことで学びが進んでいくと考えます。
最初に職場での「経験」をします。うまくいかない場合には、「振り返り」をし、その理由を考えます。
他の人との違いからヒントを得て、「概念化」をします。これにより自分なりの理論である、マイセオリーを作ります。そして、「実践」をします。
テキストで勉強をしても、仕事はなかなかできるようになりません。まず現場の課題からスタートし、その問題を解決するために学ぶのです。
森田:失敗から学ぶという構成主義の考え方ですよね。自分に問いかけてこのサイクルを回せる人はよいですが、そうでない場合はコーチングや上司の問いかけも必要です。
鈴木先生:現場では失敗しにくいものです。人為的に、失敗できる場を作るのが研修といえます。
最後に、ニューノーマル時代のIDのトピックスとして「サイモンソンの同価値理論」と「ムーアの交流距離理論」についてもご紹介しました。
森田:ここからはニューノーマル時代に、オンライン教育の成功のヒントとなる2つの理論をご紹介します。
鈴木先生:1つ目は、「サイモンソンの同価値理論」です。
コロナ禍によりオンライン教育が進みました。よくある失敗は、集合研修と同じ内容(同型)で進めようとすることです。重要なのは「同型」ではなく「同価値」を目指すことです。そのためには、改めてゴールと評価を検討する必要があります。「どうやって研修をしてきたか」ではなく、「研修で何を達成してきたか」というゴールを明確化し、その上で、「どうやって評価してきたか」という評価に立ち返ることで「同価値」の実現を目指すのです。
森田:以前、鈴木先生とYouTubeでこれまでの研修を一気にオンライン化したテルモ株式会社様や日本航空株式会社様の事例をご紹介しました。
テルモさまは新人研修をフルオンライン化された事例でしたね。
JALさまは、CAさんがファーストクラスのおもてなしができるようになるための研修をオンラインに切り替えた事例でした。「同価値」にするために苦労なさっていましたね。
鈴木先生:オンライン研修になり、集合研修ではよく見えていなかった先輩CAさんの手元の所作がよく見えるようになったというメリットがあったんですよね。さらには、それを繰り返し見ることも可能になりました。
このように、集合研修では実現しにくかったことが、むしろオンライン研修で実現できるようになったことは、「サイモンソンの同価値理論」の「同価値」だといえます。
森田:鈴木先生は、「コロナが収束したら、そのまま対面に戻すのではなく、オンラインとオフラインをうまく融合してもっと価値を出していけるとよい」というフィードバックをされていましたね。
今は多少失敗しても許してもらえる環境です。試行錯誤をしていきたいですね。
鈴木先生:2つ目は、「ムーアの交流距離理論」です。
物理的距離ではなく、心理的距離に着目して自律性を育てるという理論です。
交流距離とは、教える側と学ぶ側の心理的な距離のこと。例えば、大教室での講義は、同じ教室にいても先生との交流距離は遠い。それに対して、オンラインでの講義で、地球の裏側にいても先生との交流距離が近いと感じることもあります。
そして、交流距離は「対話」と「構造」によります。「対話」とは、先生や一緒に受講する仲間との会話です。説明・はげまし・フィードバックが頻繁にあるほど心理的な距離は縮まります。「構造」とは、教材の構成・明確な目標・考え尽くされた課題などがきちんとしていることです。この2つにより、心理的な距離は縮まります。
しかし、頻繁な「対話」ときちんとした「構造」がいつまでもある状況においては、「自律性」は育ちません。「自律性」を育てる観点から「対話」と「構造」の足場を徐々に取り外していく必要があります。
この「対話」「構造」「自律性」の3つに着目して、Withコロナ時代のニューノーマルをデザインする視点が必要ですね。
森田:教える側もこの理論をわかった上で教育を提供しないといけないし、学ぶ側も成長していかないといけないですよね。
今回のセミナーでも鈴木先生にID理論について多数ご紹介いただきました。
もう少し理論について学んでみたいという方は今回ご紹介した理論をYoutubeに動画を順次掲載して参ります。
併せてご参照くださいませ。
経験学習モデル<学習論編>
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