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インタビュー・対談
ビジネスID講座は、500名を超える方々にビジネスIDexpertの認定をお出ししてきました。本インタビューでは、講座修了生の中から特に優秀な成績を修められた方の声をご紹介いたします。
今回は、第33期をご受講された小野薬品工業株式会社 下村 えりか様に、ビジネスID講座ご受講前のお気持ち、講座からの学びや行動変容、今後の展望などを伺いました。また、下村様の上長で、認定300番目の期でMVPに選出された城方(じょうほう) 孝充様にも、組織でビジネスID講座を受講する意味や下村様の変化についてお話しいただきました。
※ビジネスID:ビジネスインストラクショナルデザインの略。本コンテンツで登場する「BID」も同様。
私が所属する営業研修部は、MR(Medical Representatives:医薬情報担当者)や営業所長、企画部など、営業本部内の全ての人財を対象にその育成を担う部署です。優れた人財の育成には、支援する私たち自身の知識やスキルの向上も欠かせません。今回の受講のきっかけは、研修部トレーナーとしての業務内容の変化、業務に関わるステークホルダーの変化があります。これまでは、新入社員を対象とした研修業務が中心でしたが、業務内容の変化に伴いMRだけでなく、営業所長や企画部などとも協働することが増えてきました。
BIDに関する基本的な理論については、ある程度理解していましたが、改めてプロの講師の方から体系立てて理論を学ぶことで、さらに成長し、より良い業務を行いたいとの思いがあり、講座に臨みました。
ここ数年、ビジネスID講座を受講済みのメンバーが、会議でBIDの理論や用語を説明してくれたり、BIDの視点でフィードバックをしてくれる機会も多く、ベースとなる知識はありました。また、講座での参考図書としてメンバーから教えてもらった『魔法の人材教育』も数年前から読んでおり、様々な場面でBIDに触れる機会が多かったように思います。
【上司コメント】弊社研修部では、教育の効果ならびに業務の効率を最大化することを目的に、ID理論を積極的に取り入れて業務に取り組んでいます。その為には、個々のメンバーが、基本的なID理論を理解し実践経験を得ていることが必要です。下村さんは、既に基本的なID理論は習得済みでしたが、新しいプロジェクトに関わる機会も増えたことから、あらためて知識の整理を目的に本講座の受講を推奨しました。
① 講師からの学び
なんとなく理解していたこと、理解したつもりになっていたことを、きちんと学び直せたほか、様々な気付きを得るなど、多くのメリットがありました。
例えば、「アダルトラーニング(大人の学び)」という概念です。大人は自身の経験から学び、「いつか役立つ」知識ではなく、「自身の業務にすぐに活用可能な」知識やスキル習得を求めます。受講者(大人)が習得した知識やスキルを実践につなげるためには、研修と職場との連携が非常に重要となります。講座では、具体的なレッスンプランを事例に助言いただくことで、現場実践を促すためのワークプレイスラーニングに基づいた研修ロードマップを具現化することができました。
その結果、講座で取り上げた「女性活躍推進」の研修企画では、受講者が学んだことを職場で実践し、応用可能な研修を設計することができました。学習者を中心に据えた研修設計の手法を学べたことは、今後の業務に大いに役立つと感じています。
さらに、講座を受講し、研修が目指すゴールの設計についても自身の理解度を顧みるきっかけになりました。
営業研修部では、「ゴールや成果にこだわる」ことを重視していますが、私自身、「果たしてゴールとはなんなのか」が突き詰められていませんでした。
例えば、受講者個人がパフォーマンスゴールを達成しても、その先にある本来目指すべきビジネスゴールを達成できるかまでは考えられていませんでした。課題解決の方法を研修だけで考えてしまい、真のゴールへの到達が見通せていなかったのです。
しかし、講師の方から「HPIやワークプレイスラーニングの観点から、本人のマインドセットはもちろんのこと、周囲の理解も必要となるはず。チームや営業所、支店レベルで取り組むべきことを考えてみては」とのアドバイスをいただきました。ビジネスゴールの達成には、受講者個人のパフォーマンス向上だけでなく、受講者の所属する組織の環境を整えるなど、幅広い視点を持つ必要があることを改めて確認しました。
② チームメンバーからの学び
これまでも私が研修設計すると、同じ営業研修部のメンバーから様々なフィードバックを受ける仕組みがありました。それが、講座受講後は、どういう意図でコメントしてくれているのかなど、メンバーからの示唆に対してより深く理解できるようになったという点も大きな収穫だったと感じています。また、私自身も自信を持って意見を言えるようになりました。
今回の講座では、「女性活躍推進」をテーマに取り上げましたが、個人で課題に取り組む期間は自分の中でまとめきれない点があり、直属の上長である城方さんに相談していました。「こういう視点で考えてみたらいいんじゃない?」とヒントをもらったときは、非常に納得できたのですが、これも講座で様々な知識に触れていたからだと思います。悩んでブラッシュアップして…また悩んで、ということを繰り返しながら、Day3の発表や最終レポートに取り組みました。
実際の業務においては、今期は、4人のチームメンバーがそれぞれ1つの研修プロジェクトを担い、4つの研修を同時並行的に進めてきました。企画書をチームで検討するのですが、その際、「こういう思いがあるから、こういう建て付けで提案しているんだな」など、メンバーの思いをくみ取り、企画の妥当性についても自分なりにかみ砕く習慣がついたのは大きな収穫でした。メリルのID第一原理やガニェの9教授事象、ワークプレイスラーニングなどのBIDの理論を正しく理解できたことで、対象者のレベル感の話など、より深く・具体的に、積極的に議論を交わせるようになりました。
【上司コメント】下村さんは、ビジネスID講座受講後、より高い学習効果や成果を意図した提案が増えたように思います。
BIDの理論を本格的に学んだことで、「こういう理論があるから、こうしたらどう?」というように細かく説明しなくても理解してもらえるので、より本質的な議論に集中して業務を進めることができています。
ベースとなる知識を基に、しっかりと考え抜くことが成長につながっていると感じています。
③ 他の受講者からの学び
第33期は製薬業界の方が多く、グループディスカッションでは、どのようなゴール設計をしていて、どのような検証をしているかなど、踏み込んだ話ができました。他社の事例に接して当社にもまだできることがあると思う点もありましたし、反対に、誇りを持っても良いと思える点も数多く発見でき、刺激になりました。
一方、異なる業界の研修計画書を見ても、良いポイントや改善点に気づけるようになったことも、今回の講習の成果だと感じています。
また、長く製薬業界にいるため、独特のルール等によって、視野が狭くなってしまう点にも注意が必要だなと考えさせられました。講師の方から、「もうちょっとステークホルダーを広く考えた方がいいですよ」というアドバイスをいただいて、対象者の幅を広げたり、研修以外の実務まで広げてロードマップを描いたりと、今までの研修をなぞるのではなく、自分が担当するスコープ外のことも考えるようになっていきました。
【上司コメント】下村さんは、学習者の成長を支援するには、研修以外の方法もあることを理解できています。しかしながら、研修以外の具体的かつ効果的な方法を提案することは容易なことではなく、その思考力を養うことは我々の課題です。本講座の他の参加者からのアドバイスやコメントが、本人にとって様々な視点や高い視座で物事を考える機会になり、有益であったと思います。
① 視野が広がり、高い視点で物事を考えられるようになった
一つの研修企画を立案する過程で、問題の本質を深く掘り下げ、様々な角度から課題を捉えられるようになりました。多角的な観点での思考力や想像力が向上したように感じます。
最終的な研修計画の作成時は、ゴールに直結するロードマップおよびレッスンプランの作成に重点を置きました。手段や方法としての研修だけではなく、現状とゴールのギャップを埋めるために必要なステップ、施策を組み込むことも意識しました。自身の経験から考えうる実現可能な範囲のみのものではなく、本当に必要なことは何かを模索しながら企画を設計しました。その結果、自分がこれまで考えが及ばなかった本部長や支店長を巻き込んだ壮大な研修設計が完成しました。
② 自分発信の企画立案ができた!
講座をきっかけに設計した「女性活躍推進」の研修計画は、私個人の「こういう研修が必要かもしれない」という思いから建て付けたものです。その後、企画を上長やメンバーに紹介したところ、会社のニーズとも合致しているとの評価をもらい、具体化することになりました。ビジネスID講座を受講したことが、私のターニングポイントになったと言っても過言ではありません。
【上司コメント】国が掲げている、女性の活躍機会や女性管理職割合の増加といった課題は、当社においても課題となっています。下村さんが現状分析を行い、しっかりと考え抜いて、ゴールに直結する研修計画書を作成してくれたのは、施策の具体例を検討していくうえでの、良いきっかけとなりそうです。実現に向けて引き続き、サポートしていきたいと思います。
① 他部署との交渉を積極的に
私の中で優先順位が高い課題感の1つに他部署との折衝があります。これまで、マーケティング部門など研修部以外のメンバーとタッグを組んで研修を実施する際に、どのように効果的にディスカッションするかという課題をずっと感じていました。
例えば、他部署から「研修が必要だ」と相談されることがあります。それは否定しませんが、研修のみで目標を達成できないことは少なくありません。研修を求められたからと言って、そのまま引き受けるのではなく、HPIの概念で、「本当にその課題は、研修で解決できるのか」を検証する必要があります。もし研修で解決ができないことなのであれば、「研修ではなくて、これが必要なのではないですか?」と別の手立てについて提案したり、議論したりする選択肢もあります。
これまでの私は、そういった他部署との意思疎通が不足していました。今後、他部署のメンバーとタッグを組むときは、学んだことを生かして理論立ててわかりやすく説明し、理解を得なければならないと考えています。ビジネスID講座を受講したことで、自信を持って他部署とのコミュニケーションをとっていきたいと思っています。
② 多種多様な受講者にもマッチした研修や教材を提供する
講座では、あるべき姿と現状のパフォーマンスギャップを埋めるための1つの手段として研修が存在すること、その研修を効果的・効率的・魅力的なものにするための手法と理論を学びました。これにより、受講者の環境やレベルに適した学習理論を選択することが可能となり、研修設計や教材開発に大いに活用できています。
現在、社会全体でダイバーシティが重視されており、当社も多様な価値観を尊重しつつ、社員が安心して働き、活躍できる環境を目指して、DE&Iの推進に努めています。私が今回企画した「女性活躍推進」は、女性にフィーチャーした研修ですが、受講者の現状、背景、経験、視点は多種多様です。全員を納得させ、成果を上げる研修の設計は容易ではありませんが、今回学んだ知識を活用し、受講者の「行動変容」に繋がる研修を設計・提供したいと思います。そのためには、自身の経験に囚われず、柔軟な思考と理論に基づいた提案への挑戦が必要です。今回の受講をきっかけに、さらなるスキルアップを図り、組織の成長に少しでも貢献できればと考えています。
【上司コメント】弊社の教育部門においても取り扱うプロジェクトテーマは年々増え、それに関わるメンバーのプロジェクトマネジメントスキルやインストラクショナルデザインスキルの向上は課題のひとつです。弊社では、全てのトレーナーのスキルレベルを可視化し、個別に目標を設定したうえで、指導にあたっています。下村さんは、普段から高いレベルのスキルを有していましたが、本講座の受講が、自身のスキルの棚卸にも繋がり、あらたな課題を見いだしたのではないかと感じています。
SLH篠田
人的資本経営の必要性が謳われる中、教育部門に求められるレベルも年々上がってきていることを実感しています。
IDの視点から一研修のADDIEモデルを回せるようになるだけではなく、HPIの視点で従業員に求められるパフォーマンスを明確化し、現状とのGapから必要な施策を提案できるトレーナーを目指す企業様が増えているように感じます。難易度の高い教育設計に取り組む場合、分析や設計にもパワーが掛かりますが、そこにものすごく時間がかかり、「考えている」状態が続くことも問題です。難しい課題に取り組む時こそ、今回の下村さんのように、アジャイルに進めていくことが重要になります。まず仮説で設計☞その後受講者の分析をする☞ニーズに合わせてブラッシュアップし、解像度を上げる。そこにチームの力も加わり実施までこぎつけた素晴らしい事例でした。
変化が激しい昨今「じっくり考える」「素早く動かす」のバランスが重要だということを改めて感じた次第です。
SLH藤川
チームメンバーの多くが既に本講座をご受講されており、部門内でもBID理論に関する用語が日常的に使用されていた中でのご受講でした。そのような状況下で、下村様の場合はベースの知識に触れられていたものの、「改めて体系立てて理解する!」という強い意志を持ってご参加いただきました。講師や上長様のフィードバックを素直に取り入れ、またチーム内でのBID軸での言動も意識しながら3ヵ月間を過ごされたことで、企画書作成以外の場面でも、多くの変化を感じ取っていただいたのではないかと推察いたします。
講座のご受講を通して得られたトレーナーとしての“自信”が、インタビュー中の素敵な笑顔からもうかがえました。
小野薬品工業株式会社の下村様、城方様、貴重なお話をありがとうございました。
(インタビュアー:篠田・藤川)
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