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企業内教育において、Off-JTが効果的であるとする時代と、OJT(On The Job Training)が効果的であるとする時代が、行ったり来たりしながら歴史を刻んできたようです。人材育成に更に高い効果や効率が求められる中で、Off-JTかOJTかではなく、成果につなげるためのOff-JTとOJTを融合させたグランドデザインが求められるようになってきているのではないでしょうか。
厚生労働省の「平成30年度版 労働経済の分析ー働き方の多様化に応じた人材育成の在り方についてー」によると、GDPに占めるOff-JT費用(2010~2014年の平均)が、米国が2.08%、フランスが1.78%であるのに対し、日本はたったの0.10%と桁違いに低い水準にあるそうです。
では日本の人材育成はOJTが担っているのでしょうか?確かに、人的資本投資の内訳で見ると、日本は「OJTのみ」の割合が、「フォーマル研修のみ」「フォーマル研修、OJT両方」の割合よりも高いというデータが出ています。(参考:内閣府の「平成30年度 年次経済財政報告―「白書」:今、Society5.0の経済へ―」)
しかし、OJTを「実施率」という別の観点からみると、男性が 50.7%、女性が 45.5%となっており、OECD 平均よりも男性が 4.4ポイント、女性が 11.5ポイント低いという実態も明らかになっています。
Off-JTに十分な投資がされず、OJTも実施率が必ずしも高いとは言えず、男女差等偏りがあるというのが現状のようです。
では他国程Off-JTやOJTをしなくても、十分な人材育成ができているかというと必ずしもそうとは言えず、労働者の能力不足に直面している企業の割合では、日本は81%(参考:英12%、中24%、米・独40%)とOECD加盟国中最も高く、人材育成が急務であることが明らかです。
日本の企業教育を担う皆さまは、非常に厳しい条件の中で、人材育成を担っていらっしゃる状況でもあると言えます。こういった背景があるからこそ、育成部門が経営戦略の実現を担う戦略部門としてのポジションを確立させていくことが求められているのです。これからの育成部門には、Off-JTとOJTを融合させた成果につながる育成のグランドデザインを描き、実行し続けていくことが求められているのではないでしょうか?
Off-JTがどのように転移して、研修後にどのような成果を生んでいるかという研究は、欧米を中心に進んできました。その代表は、カークパトリックの研修効果測定に関する研究です。小薗らはこれらの先行研究を基にして、日本の企業において、Off-JTによる研修後の効果に影響を与える10の要因について、データを用いて分析を試みています。これによると、
今後,人材開発部門が業務に貢献する研修を提供するには,研修を企画し,運営するだけでなく,研修が業務に貢献することを周知し,研修内容が職場で実践されるよう参加者を動機づけ,サポートするという認識の下,自らに代わり,研修参加者が学んだことを職場で実践するのを支援する上司や同僚を増やしていくための活動が必要である。
としています。育成部門の責任範囲が、育成をビジネスの成果に繋げるまでとすると、Off-JTを設計するだけでなく、現場の上長や先輩を巻き込んだ効果的なOJTをデザインしていくことが必要となるのです。
弊社のビジネスID講座では、企業教育ご担当者の皆さまに研修設計をしていただくのですが、研修対象者に対する施策だけでなく、対象者の上長に対してどう巻き込むかについて、フィードバックさせていただくことも多くあります。是非一緒に考えてみませんか?
参考文献:
【1】厚生労働省 平成30年度版 労働経済の分析ー働き方の多様化に応じた人材育成の在り方についてー
【2】内閣府 平成30年度 年次経済財政報告―「白書」:今、Society5.0の経済へ―
【3】Kirkpatric, D. L. and J. D. Kirkpatric(2005) Evaluating Training Programs: The Four Levels, Berrett-Koehler
【4】小薗修他(2016) 能力・態度における研修効果に影響を 与える要因とその関連性 日本労務学会誌
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