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イベントレポート
5月8日に教育システム情報学会(JSiSE)2021年度 第1回研究会が開催され、弊社森田が「DX時代に向けたインストラクショナルデザインによる教育パラダイムの変革」をテーマに実践事例を発表しました。工業社会から情報社会への教育パラダイムの変革や、企業内で教育パラダイムの変革を起こすための活動について、2015年よりスタートした「ビジネスID講座」を例にご紹介しました。
※本記事では森田の講演と、仲林先生とのパネルディスカッションのレポートをお届けいたします。
サンライトヒューマンTDMCの森田晃子です。私は製薬企業のMRとして社会人をスタートし、6年目から教育部門でMRを育成する立場となりました。
教育パラダイムの変革については、私自身も経験しました。指導者中心で時間基盤型の「工業社会の教育パラダイム」で育ってきたため、製薬企業でトレーナーになったときも同様の教育を行っていました。
しかし、次第にそうした教育の価値観に疑問を抱くようになります。自身で試行錯誤する中で、インストラクショナルデザインと出会い、熊本大学大学院 教授システム学専攻(GSIS)で3期生として学び始めました。GSISは、立ち上げ当初の2006年から、100%オンラインで修了できる大学院としてカリキュラムが作られています。そして、何よりも学習者中心の教育を行っていました。熊本大学で学んでいくうちに、私がしてきた教育は、時代にそぐわない部分があったと大反省しました。
2007年に起業をしてからは、「情報社会の教育パラダイム」に則り、学習者中心で達成度基盤型の教育に舵を切ったのです。具体的には、インストラクショナルデザインについてのトレーナーズトレーニングをしたり、企業様へのコンサルティングをしたりしています。一言で何をしている会社かといえば、ビジネスの世界に本気で、どうインストラクショナルデザインをインストールして実行していくかに取り組んでいる会社といえます。
続いて、コンサルタントとしてお客様をご支援していく中でたどり着いた「ビジネスIDにおけるグランドデザイン」についてご紹介します。弊社では、HPI、ID、PMの3つをあわせたものをビジネスID、略してBIDと謳っています。
※BIDのコンセプトはこちらのページで詳しくご紹介しております。
研修のお手伝いとしてお声掛けをいただいたとしても、真の人材育成のゴール到達には研修以外のアプローチが有効な場合もあります。経営層の方は、ビジネスで成果が上がるあらゆる方法を知りたいと考えています。そこで、経営層やマネジメント層の方がどのような出口を望まれているのかをヒアリングすることは欠かせません。さらに、データを整理したりギャップ分析をしたりして、丁寧にニーズを把握します。
HPIで、研修以外の施策もたくさん洗い出しますが、「やはりターゲットとする対象者には研修が必要である」と方向性が定まったら、インストラクショナルデザインの出番です。研修でのゴール、現場でのゴール、さらには経営層にも喜んでいただける会社としてのゴールを、KPIなどをセットにしながらデザインしていきます。
いざ組織の中でインストラクショナルデザインを実行するとなると、たくさんのステークホルダーを巻き込んでいくことが求められます。PMの考え方でアジャストしながら、臨機応変に実行していきます。
最後に、コロナ禍で、オンライン化したビジネスID講座についてご紹介します。
起業直後から、教育部門の方々に「情報社会の教育パラダイム」をインストールしていただく活動をしてきました。その一例として、弊社で2015年からビジネスIDを学ぶビジネスID講座を開催しています。
以前は、少人数・対面の講座でしたが、コロナ禍でフルオンライン化しました。3ヶ月にわたり、研修を月に1回終日オンラインで開催し、その間に個人課題の取り組みが課されます。個人課題は、職場で任されているご自身のテーマを用いて教育の企画書を作るというもので、最後はプレゼンテーションをします。
対面の研修をZoomで行うことがオンライン化だと捉えている方もいらっしゃるため、単なるオンライン化とブレンディッドラーニングの違いを、受講者としてご経験いただくことも、今後教育デザインをしていく上で重要ではないかと感じています。
最終的にはeラーニングの分析やブレンディッドラーニングの実践を通じて、教育デザインができるようになる講座です。
修了者には、ビジネスID expertという認定証をお渡しします。
この講座のこだわりは、「企業内で担当者がどのようなアウトプットを出せばよいか」という出口の設計からスタートし、コンピテンシーを作っているところです。そのコンピテンシーに見合う形で課題を設定し、必要な知識をインストールします。修了生の方からは、「非常によかった」「ビジネスIDという考え方が身についた」といったお声をいただいています。
BID講座は7年目を迎え、25期となり、300人以上の修了者を出すことができました(2021年5月現在)。
実践事例発表後、座長の千葉工業大学 仲林清教授と企業教育におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)についてディスカッションしました。
企業研修はコロナ禍でどういう影響を受けましたか? DXというキーワードでどのようなことをお考えになっていますか?
「教育の本質が問われた」というのが、学校教育にも企業教育にも共通するコロナ禍の影響だったのではないかと思います。ビジネスID講座の修了生は、これまでも出口設計から教育を考えてきているので、教育を本質論で語れるようになっています。コロナ禍となっても、比較的スムーズにオンラインに切り替えられていらっしゃったのは、ここの違いが大きかったと思います。
ビジネスID講座はオンライン化して手間などは増えましたか?
そうですね、やっぱり増えましたね。ZoomとLMS(Learning Management System)等のツールを活用し始めましたし、当初は対面とカメラを通じて伝えることの違いに戸惑うこともありました。
受講生も職場でオンライン研修の設計が求められるようになっているという変化に合わせ、内容的にチューニングした部分もありますが、講座としてのゴールは変えずに、変化した状況の中で成果を出していただけるよう、同価値を提供することができています。
一方で、休憩時間での受講者同士や講師とのコミュニケーションによる付加価値の学びをどう補っていくかという課題がありました。講座の中で交流できる時間をあえて設けたり、インターバルでのコミュニケーションを大切にしたりと、今も更により良い学びの場を作るための試行錯誤は続いています。
おもしろい話ですね。大学の授業も同じで、フォーマルな形で設計できるところ、レポートを管理する仕組みなどはオンラインの方がよくなっている気がします。一方で、インフォーマルなところ、例えば、気軽に「ここはよくわからなかったよね」といった会話は減っています。オンラインにおけるインフォーマルの学びは研究になりそうです。インフォーマルな学びの役割は大きいですよね。
大きいです。学習へのマインドは、人との関わりを通してセットされる部分があります。ただ、自律的な学習者になれば、授業が終わった後に「ちょっといいですか」と残って質問したりチャットで不明点を書き込んだりといったことが受講者側からできるようになるでしょう。教えすぎはよくないので、その塩梅が大切ですね。
オンラインを効果的に活用したまさにDX時代を志向したインストラクショナルデザインの可能性をお示しいただき、この知見は企業のみならず各種教育機関の授業設計にも適用可能であるという印象を受けました。ありがとうございました。
DXが進むことで、これまで使えなかった手法が使えるようになる等、可能性は広がります。
しかし、コロナ禍で様々な実践事例を拝見したり、ご支援させていただいていると、手法の選択肢が増えることと、課題が解決されることは別のことだということを痛感させられます。
人材育成における課題解決メソッドであるビジネスインストラクショナルデザインのフレームを活用することで、現状と目指すゴールのギャップを埋める戦略を導き出すことができ、その戦略を実行するためのHowとしてDXを用いることで、初めてDX化のメリットを享受できるのではないでしょうか。
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