インタビュー・対談

【ビジネスID講座 修了生インタビュー】400番目のビジネスID expert
株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー  坂口 圭一様

企業内教育でインストラクショナルデザインを活用できる教育専門家の証である【ビジネスID expert】の認定者数が400名を超えました。ビジネスID expert は、ビジネスID講座を受講し、教育企画書等の各種課題を提出し、インストラクショナルデザイナーのコンピテンシーを満たすと認定されます。第28期の受講者の中で、最も優秀な成績をおさめられた方に400番目の認定をさせていただきました。
記念すべき400番目の認定者となったのは、株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー(以下 NTT-ME) 事業運営部 ネットワーク研修部門の坂口 圭一様です。坂口様に、400番目の認定者になられたご感想やビジネスID講座で学んだことなどをお聞きしました。また、坂口様の上長で、ご自身も3年前にビジネスID expertを取得されている藤川 和己様に受講後の坂口様の変化や組織にビジネスインストラクショナルデザイン(BID)を導入したことによる成果などをお話いただきました。

坂口 圭一様(左)と藤川 和己様(右)

ポイント

本インタビューのポイントは以下の3点です。

❶「研修」を因数分解して考える

❷事業計画達成に紐づけた人材育成の戦略を考える

❸各研修を体系化し、研修部門の価値を向上させる

受講のきっかけ

−NTT-ME様は、新たに研修部門に異動してきたタイミングで、ビジネスID講座をご受講されることが仕組化されていますよね。坂口様も異動をきっかけにビジネスID講座の受講を促されたのでしょうか。

坂口 2021年10月にこの部門に異動してきたときに、当時の上司から「過去5年ほど新人の教育担当者が受講しているビジネスID講座というものがあります。研修を企画する際に、非常に役に立つ講座なのでぜひ受講してください」という話があり、受けたいと思いました。その際に、初めてビジネスID講座という言葉を聞きました。
すでに受講している部署の先輩からも「講座の学びと実践がシームレスですごくよかった」と聞いており、藤川さんからも「3日間飽きずに面白いよ」と背中を押されていたので、楽しみでした。

藤川 異動してくるとビジネスID講座を受講する仕組みとなっているので、部門内で各自が自然に声をかけながら新任の方を送り出しています。
私が、以前ビジネスID講座を受講したときに感じたのは、BIDの学びには、つまらないと思う瞬間が全くなかったということです。ワークやディスカッション中心で手を休める暇もないけれど、決して辛いとかつまらないと思わなかった。頭を使うのでとても疲れますが、面白く、また、自分達の研修に非常に活かせると感じました。得るものが多い講座ですよね。
受講者の立場からすると、単に「この講座を受講してください」と言われ、それが、ただ話を聞くだけの講座だとつまらないですよね。坂口さんには、講座の内容の詳細については説明しませんでしたが、「学びが多く、すごく面白い講座だよ」と送り出しました。

坂口 異動になる前は、エンジニアとして通信機器の構築や保守業務をしていたので、研修を企画したり、研修でインストラクターをしたりということは未経験でした。この部門に異動したからには、研修をしっかり企画し、建て付け、運営できるようにならなくてはいけないと思いました。講座には、「そういったことを学べる場なのだな。きちんと勉強してこなくては!」という思いで挑ませていただきました。

BIDを学んだことでの受講者自身の変化

❶ 「研修」を因数分解して考える

−実際に受講されてどのように感じましたか?

坂口 講座当日が楽しみで、開始時間の前からスタンバイしていました。講座前日には、作成した資料を見直して、「明日こんな感じでやろうかな」と、毎回楽しみに参加していました。


−坂口さんのやる気は、提出された課題からも伝わってきていました。オンラインでしたが、楽しんでいただいている様子も伝わりました。

坂口 我が社では、仕事にメリハリをつけて、けじめをつけるようにと教育されているのですが、講座の課題に夢中になって取り組んでいたら、あっという間に遅い時間になってしまっていたこともありました。それほど、没頭していたんです。

藤川 気持ちはわかります。私も、研修設計の参考にするために、ビジネスID講座の中で紹介している最新の学校教育のコンテンツに見入ってしまったことがありました。


坂口
 「研修(学び)」と「実務」と「興味」の三位一体感がありますね。


−講座からどのような学びがありましたか。

坂口 一番の学びは、「研修」を因数分解して考えられるようになったことです。
もともと現場でエンジニアをしていたので、仕事を覚えてもらうために後輩を指導することはあっても、体系立てて人に教育する経験はありませんでした。また、後輩に教える際も、経験や勘に頼っていました。研修をどう組み立てるか、どう伝えて動機付けをするか、どう教えるかといったこと全てに戦略がなく、「研修でなんとかしよう」というひとことで片付けていたんです。
このビジネスID講座を受講して、「研修」を要素に分解できるようなりました。例えば、入口や出口という考え方は印象的でした。受講者の現状を「入口」として、目指すべきゴールを「出口」とする。その「GAP」を埋めるために、「ガニェの9教授事象」や「メリルの第一原理」などを代表とするさまざまな「手法」を使う。そして、「カークパトリックの4段階評価モデル」で「評価」をしていきます。これらはすべて「研修」の要素ですよね。

「研修」を因数分解して考える


−因数分解とは面白いですね。確かに、BIDは教育を数学的に考えるという一面があります。もしかしたら、理系の方はBIDが腑に落ちやすいかもしれません。

坂口 そうなんです。研修をデザインする上で、要素に分解することができると納得感が生まれます。私は、最初の段階で納得感がないと、深いところまで理解ができないんです。わかりやすいように小さく切り分けることで、「これはこういうことだったんだな」と納得したり、「これが足りないな」と不足しているものに気が付けたりします。
このように、ぼんやりととらえていた「研修」を因数分解して考えることができると気がつけたのは、BID講座を受講して最も良かった点です。

藤川 実際に業務中も因数分解という言葉はよく使いますよね。混沌としたものを棚卸して、切り分けて、組み立て直すときは、「因数分解しよう」と話しています。

 

❷事業計画達成に紐づけた人材育成の戦略を考える

−坂口さんのビジネスID講座での発表資料は、ミクロの研修から考えるのではなく、マクロのプロジェクト全体像があって、そこから要素が因数分解されているのが印象的でした。

坂口 それは、入社したときから全体像を捉えて考えるよう教育されてきたからだと思います。事業計画を立てる際は、中長期的な視点で目標からブレークダウンして考えます。1年で何をするかということより、2・3・4年と先を見据えた上で、「5年後にこの目標に到達するためには、現在のあなたたちの仕事はこれですが、半年後にはこうしたことができるようにならないとね」といった考え方で、人材育成の戦略を立てています。

藤川 ビジネスID講座自体では、企業内教育の担当者が、事業計画を達成するための人材育成の戦略を考えたり、中長期的な視点を持てたりするように設計されていますよね。
教育をデザインする時に、まずビジネスゴールを設定してから、パフォーマンスゴール、トレーニングゴールを設定していく。その上で、達成に必要な研修をデザインしていきます。こうしたプロセスを経ることで、自ずと視座が高くなるように感じます。
講座を受講することで、目の前の業務に忙殺されていた人は、事業計画やビジネスゴールに目が向くようになります。逆に、事業計画やビジネスゴールは理解していても、何からどう始めたらよいかがわからなかった人にとっても実行に移しやすくなります。
こうした視点を身に付けることができ、部門として効果を実感できる講座なので、メンバーに受講してもらっています。

事業計画達成に紐づけた人材育成の戦略を考える

−実は、教育のご担当者に視座を上げていただき、ビジネスの戦略から逆算して人材育成を考えてほしいという思いでBID講座を設計しています。

坂口 研修を設計する際、他の研修を参考にしようとしたのですが、ゴール設定されていない研修もありました。いきなり実行項目の「第1章」からスタートしているような状況でした。「とりあえず順番に進めればいいのかな」と思いスタートしたとしても、最終的にそこまで力がついておらず、さらにいうと、どれくらいのレベルにまで達していればOKなのかも曖昧な状態で、「これでいいのかな?」と疑問を持ちました。やはりゴールから考えないとうまくいかないのではないかと思うようになったんです。講座を受講したことで、色々な気付きを得られるようになりました。

3

BID導入による組織の変化

❸各研修を体系化し、研修部門の価値を向上させる

−BIDを学んだことによる変化はありましたか?

坂口 この部門に異動して、講座も受講して、人を育成することの責任感をより感じるようになりました。人の育成、その人の将来を考える重要な仕事に就いていると感じています。
特に、BID講座を受けた後は、受講者に時間を使ってもらっている以上は効果を最大化したいと考えるようになりました。少しでも多くの学びを身につけて帰ってもらいたい! 100学んだのならばその100を現場で活かせるようになってほしい! と思っています。研修をして終わりではなくて、次に繋げてもらうことに重きを置き、育成を進められるようになりました。

藤川 組織的な変化でいうと、社内の既存の研修を体系化したいと考えて動き始めています。社内にはさまざまな研修が並行して実施されています。また、新たな研修も随時設計されています。しかしながら、それぞれの研修が体系化されておらず、さらに、すべての研修でゴールの設計がなされているわけではないという現状があります。これは全社的な課題だと感じています。
研修部門では、新規の研修を開発しながらも、既存の研修にもゴール設計をしたり、受講するとどのレベルに到達できるのかを示したりしながら、研修全体を構造化していきたいと考えています。
既存の研修を良くしていくにあたって壁になるのが、「あの組織はこうだから」「今の業務はこうだから」という現実から入る思考です。できることを自分で制限してしまっているんですよね。メンバーがビジネスID講座を受講することで、現実の障壁から議論をスタートするのではなく、未来の理想型やありたい像を描いて、そのためにはどんな人材を育成すべきかを考えながら、研修を組み立てられるようになったことは大きな収穫でした。上流工程から考えられる思考になってきていると思います。

本当はどの研修でも、「こういうことができるようになる」というシラバスのようなものが整っているといいのですよね。

藤川 まさにシラバスがない状態に課題意識を持っています。

 

坂口 受講者からすると、研修が体系化されていないと「どの研修を受ければいいの? この研修はどのレベルにまで到達できるの? それがどう組織への貢献につながるの?」ということがわかりません。受講者が迷わないように整理し、研修を体系立てていきたいと思っています。

 

藤川 受講者自身が学びの処方箋を描くことができると、研修部門のプレゼンスをあげることにも繋がると思います。
最近は、社会的にも全社的にも、どれだけコストをかけたとしても人材育成は、会社の未来のために必要であるという考え方が広まり、注目されつつありますよね。
しかし、これまでは、研修部門の仕事は、研修を淡々と行う部署で、社内アピールする場がありませんでした。地味で、人気がなくて、「あの人たちは、何をしているのだろう」と思われていた可能性すらあります。実際にいまだに言われることもありますが……笑
社内の組織の中で、どうやってプレゼンスを発揮していくのかということは、大切なテーマです。
ここ3年ほどは、社内の表彰制度にエントリーするなど、積極的に発信を始めています。私たちが進めていることを認知してもらうことはとても重要なことだと感じています。
そういった意味でも、研修部門で、新規の研修設計と並行して、既存の研修に対してもゴールを設計し体系化していく必要性を考えて、動き始めているのです。

各研修を体系化し、研修部門の価値を向上させる

 

4

編集後記:人的資本を考える

昨今、経産省が押し進めている人的資本経営。人的資本経営は、「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」と定義されます。

これまでは、人材は人的資源と表現されることが多く、いかに人材を管理するかが重視されてきました。しかし、近年では、人材こそが企業価値を向上させる存在であることから、人材の成長への投資が大切であるという考え方が広がってきています。こうした時代の流れから、人材を人的資本ととらえ、人材による価値を最大限に引き出すことで、企業価値の向上につなげるという人的資本経営が注目されるようになったのです。

経産省主導の「人的資本経営の実現に向けた検討会」の座長・伊藤邦雄氏がまとめた人材版伊藤レポート2.0では、経営陣が主導して策定・実行する、経営戦略と連動した人材戦略について、3つの視点(Perspectives)5つの共通要素(Common Factors)が示されています。(下記図1参照)

ご紹介したNTT-ME様の事例は、人材版伊藤レポートにおける5つの共通要素(Common Factors)のうち、特に「要素①:動的な人材ポートフォリオ」「要素③:リスキル・学び直し」に取り組まれている事例でした。

3つの視点
視点①:経営戦略と人材戦略の連動
視点②:As is‐To be ギャップの定量把握
視点③:企業文化への定着

5つの共通要素
要素①:動的な人材ポートフォリオ
要素②:知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
要素③:リスキル・学び直し
要素④:従業員エンゲージメント
要素⑤:時間や場所にとらわれない働き方

要素①:動的な人材ポートフォリオ

現在の経営戦略の実現、新たなビジネスモデルへの対応に必要となる人材を質・量の両面で充足・最適化させることが必要となる。このためには、現時点の人材やスキルを起点とするのではなく、現在の経営戦略の実現、新たなビジネスモデルへの対応という将来的な目標からバックキャストする形で、必要となる人材の要件を定義し、その要件を充たす人材を獲得・育成することが求められる(適所適材)。

【NTT-ME様におけるお取組み】
元々事業計画を意識して業務に携わっていたとお伺いしましたが、今回BID講座の学びが、経営戦略と人事戦略を紐づけるお手伝いができたのではないかと思っています。坂口様、藤川様の部門は、事業部門が人材ポートフォリオの策定や人材の確保を主導する体制を目指されており、「受講者自身が学びの処方箋を描くこと」ができる体制構築に向けて、今後ますますのご活躍を期待しております!

要素③:リスキル・学び直し
事業環境の急速な変化、個人の価値観の多様化に対応するためにも、個人のリスキル・スキルシフトの促進、専門性の向上が必要となる。この際、個人が自らのキャリアを見据え、学び直しに取り組むことができるよう、企業としても、個人の自律的なキャリア構築を支援することが重要である。

【NTT-ME様におけるお取組み】
研修部門メンバーのリスキルが可能に!
研修や経験はKKD(勘と経験と度胸)でできてしまうこともあります。しかし、ネットワーク研修部門では、異動された方は全員BID講座をご受講されています。配属前はエンジニア等をご経験されており、教育・研修には初めて携わる方が多いと伺いました。教育に携わるにあたり必要なスキルや専門性を早期に身につけ、業務に従事されている点が素晴らしいなと常々感じております。講座受講前は、上長からメンバーにリスキルの重要性を丁寧に説明された上で送り出してくださるので、皆さん真剣に受講なさいます。また、これまで40名程度の方が本講座の認定を取得しておりますので、部門内での共通言語化がされており、同じ目標を持って取り組むメンバーがいることでリスキルに積極的に取り組まれている点も大変印象的です。

【図2】人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素(3P・5Fモデル)

【図1】人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素(3P・5Fモデル)

出典:経済産業省 持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート~

育成・教育研修部門の方の人的資本経営へのかかわり方ついては、こちらの記事
ご紹介しています。ぜひご覧ください。

 

株式会社エヌ・ティ・ティ エムイーの皆様、ありがとうございました。

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