インタビュー・対談

ビジネスID講座 修了生 インタビュー 【後編】
~全日本空輸株式会社様~

航空業界では、技術の進歩によりパイロットに求められる能力も変化し、2017年にCBTAプログラム導入に関する通達が国土交通省航空局より通知されました。BID講座≪航空業界編≫は、同プログラム導入において必要となるISD(Instructional Systems Design 以下 ID)についての理解を深めることができる講座です。BID講座を受講した全日本空輸株式会社のパイロット訓練を担当されている皆様に、お話を伺いました。前編では、受講の経緯や得た学び、感想についてご紹介しております。後編では、受講後数ヶ月が経ち、BIDを導入したことで得られたメリットについて伺いました。

目次

本連載の目次は以下です。

前編はこちらからお読みいただけます。

後編目次

  1. 反転学習と振り返りにより受講者の参画度と理解度を高める
  2. BIDによる共通言語化が”空”と”地上”の懸け橋となる
  3. 費用対効果が高く、価値のある教育提供が可能になった組織としての学び
  4. 編集後記
1

反転学習と振り返りにより受講者の参画度と理解度を高める

 

訓練に取り入れた内容とその反応について伺いました。

BID講座を受講されて数ヶ月が経ち、水野さんと和田さんは学んだことを副操縦士任用訓練に取り入れられたと伺いました。その内容と反応について教えてください。

水野 IDを学んでいる期間に、副操縦士になる訓練生に向けた講座を行っていたので、すぐに事前学習を取り入れてみました。学科訓練、集合研修の前に教材を配布し、事前学習をしてもらいました。
また、事前学習についてアンケートも取りました。対象者からは、「事前に学ぶことで、疑問点を整理した上で学科訓練に臨むことができたのでよかった」といった声が挙がりました。IDの効果はすごいなと実感しています。
今回の対象者は、モチベーションが高く、事前学習に積極的に取り組んでくれました。当初は、宿題は負担となるので嫌がられるかもしれないと思っていたので、意外な反応でした。
この事前学習については、学科や座学訓練において特に活用できるのではないかと思っています。

 

―事前学習を取り入れたことで、訓練の到達度は変わりましたか?

水野 そうですね。事前学習をすることで、確実に理解度が高まったと思います。反転学習を取り入れたことによって、座学でのディスカッションが、他の訓練と比較して、明らかに盛り上がりました。「参加している感」がグンと出たと思います。

和田 今回は、教える側でIDについての教育を受けたのは、私と水野さんだけでした。つまり、他の学科教官はIDについて学んでいませんでした。そこで感じたのが、IDについて学んだ人と学んでいない人とでは、訓練に対する考え方や進め方に違いが出てきたということです。
例えば、BID講座でDay2の最初にDay1で学んだことの振り返りをすることが印象に残っており、スケッチブックにカラーペンで自由に振り返りを描くワーク。それが非常に有効だと感じたので、訓練にも取り入れてみたのです。結果として、お互いの理解を深める上で非常に有効でした。オブザーバーの教官の方々からも、「あのやり方はすごく浸透が早いね」「彼らがどれくらい理解しているかが実感できて良い方法ですね」と言っていただけました。
教える側全員に、IDや訓練に対する考え方・進め方を浸透させてから研修に臨むことができれば、更なる効果が出せると思いました。

2

BIDによる共通言語化が”空”と”地上”の懸け橋となる

続けて、クローズド型講座を組織で受講されたメリットを伺いました。

―組織のメンバーだけで受講するクローズドな講座を受けたことに関してはいかがでしたか。

城島 チームで一緒に受けたメリットの1つ目は、先ほど課題として挙げていた共通言語化が進んだことです(詳細は前編をご覧ください)。これまで、品質企画部の若手は、ベテランのパイロットのメンバーに意見を言いづらかったという背景がありました。思いがあっても、KKD(勘・経験・度胸)がないですし、適切な言葉で表現することも難しかった。しかし、BIDを学んだことにより、「ID的に考えたらこうした方が良い気がしますが、いかがでしょうか」といった表現で意見を言えるようになりました。また、組織で講座を受けたことで、パイロットの経験を少し理解できるようにもなりました。実際に、会議時間も短縮しています。共通言語ができたことにより、組織が良い形でまとまり、進化がスピードアップしています。
そういう意味では、自社の「空」と「地上」のスタッフを繋いだ言語がBIDといえるかもしれませんね。

空と地上に共通言語が欲しかったことは、当初からの課題だったのですが、実はもう1つ共通言語化の副次的な効果がありました。
それは、メンバー間で他者理解が促進されたことです。マネジメント側として、性格や考え方だけでなく、得意なことがわかるようになりました。私も含めて、みんなが同じ課題や発表に取り組むと違いが見えてきますよね。自分が苦労したことを「この人はこんなに上手くできるのか」と気がつくことができました。
また、私が「この人のこの部分、なんだかいいな」と漠然と思っていたことについて、講師が的確に「ここの点が良いですね」とフィードバックしているのを聞くのがとてもおもしろかったですし、学びになりました。フィードバックを聞くことで、自分では言語化できなかったことに対して、具体的に理解できたのです。
メンバーの得意分野がわかったので、普段の仕事でも、その得意なところをどんどん活かしていってもらいたいと思っています。

水野 異なる業務を担当している方達と一緒に講座を受講することで、通常の業務では見えていなかった点が見えるようになりました。同じ課題をこなすことで、その方の個性や考え方、発表の仕方などがわかりました。これは組織のメンバーが集合する講座として受けてよかった点だと思います。

渡邉 学科教官の皆様は、普段は訓練センターにいて距離が離れているのですが、研修を設計する上では、学科訓練の部分とシミュレーターなどを使う技術訓練の部分とを一緒に考えていかなくてはなりません。学科教官の知見もあわせて学ぶことで、自分の領域だけでなく、これから作っていくもの全体について考えることができるようになりました。これも非常に大きな学びになりました。

3

費用対効果が高く、価値のある教育提供が可能になった組織としての学び

課題として挙げられていた評価設計についても、変化がありました。

―もう1つ課題として挙げられていた評価設計について、何かヒントは得られましたか?

渡邉 BID講座の中で教わったカークパトリックの4段階評価モデルが評価設計に活用できるとわかり、社内にあるデータを活用して評価を設計することができています
CBTAはデータ分析をして訓練のカリキュラムを改善することがベースとなっています。しかし、これまでは、訓練審査や実運航からのデータはあるのに、どう分析すればよいのかわからず、試行錯誤していました。しかし、BID講座でカークパトリックの4段階評価モデルを教わってから、訓練後のトレーニングゴールやその後の現場でのパフォーマンスゴールの評価に、どのデータを活用すればよいかがわかるようになってきたのです。
レベル4は不安全事象のデータを評価することはわかっていましたが、なぜその不安全事象が起こったかどうか詳細を分析していくと、通常運航の中で原因があったのか?(レベル3)、訓練そのものの見直しが必要か?(レベル2)、BID講座の中で教わったデータを活用した教育の評価が設計できるようになりました。

カークパトリックの4段階評価

カークパトリックの4段階評価

―売上が数値で見える営業職などを除いて、一般的にパフォーマンスゴールの設計に必要なデータの収集は難しいと言われています。その点、パイロットの仕事に関しては、データコレクションがなされていますよね。

城島 そうですね。ただ、これまでは、そのデータをうまく活用できていなかったんです。
航空業界において、トレーニングゴールまでしかデータを活用できていませんでした。パイロットは皆さん優秀な方ばかりなので、トレーニング結果は5段階中3が9割以上でバラツキがありません。つまり、その中でデータを分析してもあまり意味がなかったのです。
でも、今回、パフォーマンスゴールやその先のビジネスゴールについて、評価データとして整理・構造化ができるという兆しが見えてきたのです。カークパトリックの4段階評価モデルを学ぶことによって、ADDIEモデルのサイクルを回しながら、エバリュエートして訓練を改善していくということについて、ようやく腹落ちしました。

渡邉 先月、IDの考え方を活用したデータ分析や整理について、航空局主催のCBTAカンファレンスでお話しする機会をいただきました。カンファレンスでは、航空局の方からも、このデータ分析について「なるほど、この整理の方法はよいね」と言っていただくことができました。

城島 渡邉さんが、大きな会場でプレゼンテーションをしている姿を見たときに、これまでの苦労を思い出して涙腺が緩みました。

 

―データ分析の結果を人材育成に反映させられると、さらにパイロットの質を向上させることができそうですね。

渡邉 不安全事象をコンピテンシー分析したデータを基に、訓練の結果とパフォーマンス結果に差が出たところに対してアプローチを行っていこうと思っています。受訓生の立場や現場で起こっていることをイメージしながら、どのようなアプローチが有効かを考えているところです。

城島 BID講座を受講することで、設計自体のヒントを得られ、ADDIEを回す上でのデータ活用についても学ぶことができました。パフォーマンスゴールの評価データを分析することで、より効果的に人材を育成できる訓練設計ができれば、会社全体に大きなインパクトを出せることになります。そう考えると、BID講座は費用対効果が非常に大きい。本当に受講してよかったと思っています。

4

編集後記

SLH篠田 パイロットの世界は規定で年数回の訓練や審査が義務付けられています。フライトシュミレーターを動かしますので、訓練・審査の実施には莫大な費用がかかります。データ分析した結果を元に必要な訓練を抽出し、より効果・効率のよい訓練設計ができればコスト削減や成果創出につながります。その訓練が属人的にならず、チームとして標準化された状態で実行されていくと更にGoodですよね!BID講座を受講して、こうしたことを理解した人材ができたということが会社にとっての価値につながった事例です。
前編では、パフォーマンスゴールの達成までをお伺いしておりましたが、今回費用対効果についてもお伺いすることができ私たちにとってはビジネスゴールも達成できたかな?!と感じるコメントを頂戴でき大変嬉しく思っております。

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