コラム

新人研修を見直す その①
 産学連携プロジェクトを立ち上げる
  ~企業側も学生(未来の社員)も学校もWIN-WIN-WIN~

新人研修をリデザインするにあたって大切になるのが、まずは、新入社員に対する理解です。新たに入社する社員の方達は、学校教育でどのような学びを経て、社会人としてのスタートを切ろうとしているのでしょうか。 近年、小中高校段階においては、探究学習やプログラミング教育の必修化など、従来の学習とは異なる変化が起きています。また、産学連携プロジェクトも注目を浴びています。 本コンテンツは、新入社員への理解を深めるための、企業と学校の連携プロジェクトが生み出す多様な可能性についてご紹介します。

産学連携プロジェクトを立ち上げる
産学連携プロジェクトを立ち上げる

多様化する学校との関わり方

「企業と学校との連携」 と聞き、どのようなイメージが浮かびますか?

大学などにおいては、自社や業界に関心のある学生を一定期間受け入れるインターンシップや、学部や研究室単位での共同研究などを思い浮かべるかもしれませんね。

また、現在では小中高校段階でも多様な連携のあり方が広がっています。新しい学習指導要領では「社会に開かれた教育課程」が重視され、学校の中だけにとどまらず、地域や企業との連携 が促されています。例えば、文部科学省が力を入れているWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム指定事業では、Society5.0に向けた人材育成として、企業などとの連携を重視することが示されているのです。

なお、小学校から高校まで必修化されたプログラミング教育においては、企業の知見を学校教育に生かしていくこと が期待されています。教材提供や講師派遣(事例*1)、教員研修の実施などの連携事例が登場しています。

プログラミング教育だけでなく、「総合的な学習の時間」や「総合的な探究の時間」、学校設定科目などで、企業や地域、学校が共に授業を設計する例も出てきています。

これまで以上に、企業と学校の連携の仕方は多様化していく といえるでしょう。

では、企業と学校が連携することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

産学連携プロジェクト

産学連携プロジェクト

連携プロジェクトの企業側のメリット

まず、企業側のメリットについて考えてみましょう。

近年、企業では、SDGsに対する理解やCSR活動の充実、社会変化に即した新規事業の開発などが求められるようになりました。こうした発想は社内だけでは生まれにくいものです。

そこで注目されているのが、学生や生徒と協働で実施するPBLやワークショップ です。

現在の学生・生徒はZ世代と呼ばれ、ソーシャルネイティブであり幼少期からSDGsの価値観に触れています。従来とは大きく異なった価値観を持っています。彼らに対する理解を深めることは、企業の今後の経営課題を理解すること につながるとともに、人事部門や企業内教育のご担当部門の皆様にとっては、採用や新人教育を見直すきっかけ にもなるはずです。

新人教育であれば、インストラクショナルデザイン(ID)でいう入口(新人の現状)の把握が正確にできるため、ゴールに向けての最適なHowの設計ができ、研修の効果が大きくなるでしょう。

すでに行われている連携事業に加えて、人事部門や企業内教育のご担当部門の皆様も、現在の学校教育に興味関心をもって、積極的に関わられることをお勧めします。

連携プロジェクトの学校側のメリット

次に、学校側のメリットについて考えてみましょう。

まず、新学習指導要領では3本の柱として、「実際の社会や生活で生きて働く知識及び技能」「未知の状況にも対応できる思考力、判断力、表現力など」「学んだことを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力、人間性など」を示しています。

こうした学びを実現するためには、学習内容と現実社会との繋がりを実感させるような学びを設計すること が非常に重要です。その際に企業の協力を得ることができれば、学習内容が社会でどう活用できるのか(できそうか)実感できる機会を増やすことができるでしょう。

また、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)に代表されるように、現在、教員主導の学びから学生・生徒主導(学習者中心)の学びへの転換 が求められています。これにより、教員はファシリテーターとしての役割が求められるようになりました。

学校現場では、膨大な事務処理により教員の多忙化が指摘されてきました。それに加えて、探究学習を充実させるためのプロデューサーやコーディネーターの役割も期待されるようになったのです。
企業のプロジェクトマネジメントのスキルやビジネスの専門性により、こうした学びの質的転換のサポートを行っていくことができるのではないかと考えています。

連携プロジェクトにおける注意点

このように企業と学校が連携するメリットは多くありますが、注意すべき点もあります。

それは、学習者の活動自体を目的としないことです。

重要なのは、身につけてほしい資質・能力を明確にした上で活動を設計する視点です。

学校と連携してプログラムを検討する際には留意しておくとよいでしょう。

この解決手段の一つに、TCI(Task-Centered Instruction)*2というID理論があります。
TCIについては、「新人研修を見直す その② プロジェクト型学習の考えを取り入れてデザインする」をご覧ください。

学校との連携というと、敷居が高いと構えてしまいがちですが、企業にとっても社員を育てるための一つの方法として捉え直すことで、新たな可能性が広がっていくかもしれません。

*1参照:みらプロ(https://mirapro.mext.go.jp/
*2参照:C.M. ライゲルース,B.J. ビーティ,R.D. マイヤーズ 編, 鈴木克明 監訳: “学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル”, 北大路書房,京都 (2020)

 

これから、学生主導の学びで学校教育を受けた新人が入社してくる時代になるため、次世代に向け、研修をリデザインしていくことが重要です。

ビジネスID講座では対象を理解し(入口設計)、ゴールに向けた教育を構築していきます。

人材開発責任者だけでなく産学連携担当者などにもご参加いただき、設計を考えていくことがお勧めです!

ビジネスID講座

 

新入社員の入社まであと1か月とちょっと。
今から来年度の新人研修に新たな試みを取り入れることは難しかもしれませんが、このような発想をもって、新入社員と接したり、一部分でも取り入れて実践することで、来年度に向けたヒントが得られるかもしれませんね。