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学校教育では、「プロジェクト型学習」という方式を用いて、学生に問題解決アプローチを学ばせ、社会人基礎力を向上させる取り組みが盛んに行われています。この考え方は、もちろん企業内教育にも活用できます。
本コンテンツでは、比較的こういった方式を採択しやすい新人研修を例にして、ご紹介していきます。
まず、事例をご紹介します。
プロジェクト型学習の考えを取り入れた新人研修の事例
新入社員研修として、新入社員5名に、自社の工場見学者向けの会社案内動画を作成してもらうというという課題を出すことにしました。
このようなプログラムが、なぜ効果的と言えるかというと、学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論の1つであるTCI(Task-Centered Instruction)の考えに基づいているからです。
TCI(Task-Centered Instruction)は、「課題中心型インストラクション」と訳され、現実にある課題を学びの中心に据えた、学習者主体の学びを促す学習方法の一つです。
課題中心の学びというと、PBL(Project-based Leaning:プロジェクト型学習/Problem-based Learning 問題解決型学習)が有名です。
PBLもTCIも「学習者の内発的動機づけ」や、「学習者同士での協働」を重要視することは共通しています。TCIは、それらに加えて、現実の課題を最後までやり通すことでの「効果」と、学習者への支援を提供することへの「効率化」のバランスを取ることにもフォーカスを当てています。
TCIには1)学習課題、2)既有知識の活性化、3)例示/モデリング、4)応用、5)統合/探究の5つの要素があります。
「プロジェクト型学習の考えを取り入れた新人研修の事例」のアジェンダに合わせて、TCIの5つの要素について見ていきましょう。
※図はクリックすると拡大表示できます。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、TCIの考え方は、別のインストラクショナルデザインの理論の1つである「メリルの第一原理」とよく似ています。メリルの第一原理についてはこちらの記事をご覧ください。
TCIは、メリルのID第一原理に加えて、教育設計に関わる3つの理論モデルの影響を受けているため、各要素での教育担当者の支援の仕方がより詳細に描かれている点に違いがあります。また、TCIはプロジェクトによる学習に特化している点もメリルのID第一原理と異なる点と言えるかもしれません。
これらの違いにより、TCIは、実際の学習活動において、教育担当者が果たすべき役割をよりイメージしやすいという良さがありそうです。
TCIは、学校教育での課題活動のプロジェクトで活用されることが多いですが、企業内教育での新人教育やOJTでも活用することができます。研修とOJTのスムーズな連携について考える際も、TCIの要素からいろんなヒントが得られそうです。
情報社会においては、どのようなテーマが与えられたとしても、そのテーマに関する情報や手順について、アクセスができる環境が整っています。
教育担当者が細かいことを教えなくても、学習者は自分たちで調べることで、実際にやってみるために必要な情報を入手することができます。したがって、情報探索ができるスキルよりも、課題を遂行するためのスキルがより重視されるようになっているのです。
TCIは、学習者へ支援を提供することの「効率化」と現実の課題を最後までやり通すことでの「効果」のバランスを大切にしているため、今の時代にフィットしている概念だと言えそうです。
※本コンテンツは、まずTCIをざっくりと理解していただくことを目的としています。正確な内容が知りたい方は、詳細を知りたい方は、以下の参考文献をご覧ください。
参考:C.M. ライゲルース,B.J. ビーティ,R.D. マイヤーズ 編, 鈴木克明 監訳: “学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル”, 北大路書房,京都 (2020)
◆新人研修の見直しをお考えの方は、こちらもあわせてお読みください。
「新人研修を見直す その① 産学連携プロジェクトを立ち上げる」
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