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経営者は、Off-JTを実施した後にOJTでフォローすることで、教育の成果を高めることを期待しています。しかし、実際に現場ではうまくいっていないケースが多いようです。筆者が教育研修部の部長をしていた時もそうでした。それはなぜでしょうか。一緒に考えてみましょう。
Off-JTとOJTの両方を実施している企業の経営者の皆さまは、Off-JTを実施し、その後にOJTでフォローすることで、Off-JTで学んだことが実践で活かされ、受講者が成長していくと考えておられる方が多いと推察します。
実際に、経済産業省や厚生労働省の調査*1では、調査対象の約半数の企業がOff-JTとOJTを実施していることが分かりました。
では、実際の現場ではOff-JTとOJTが本当に結びついているのでしょうか。
筆者が教育研修部長をしていたころ、「この忙しいときにOff-JTだなんてやめてほしい」「福利厚生だよね。3日間ゆっくりしよう」という声を何度も耳にしました。
教育研修部門では、参加者に対して何らかの知識、スキルやマインドをより良い方向に成長させようと、一所懸命に企画・実施していましたが、上記の発言からは、受講者がOff-JTを成長の機会と捉えていないように感じます。
※1
経済産業省 2018年版ものづくり白書 第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題 第2章 ものづくり人材の確保と育成 第1節 労働生産性の向上に向けた人材育成の取組と課題
「このままではOff-JTで実施したことがOJTでフォローされることはない」と危機感をおぼえ、教育研修部門と現場とのすれ違いの原因を調査したところ、次の3つのポイントに辿り着きました。
まず、「Off-JTの目的が現場のニーズに合致しているか」というポイントです。
筆者は営業部門に対して、顧客の潜在ニーズを引き出すスキルを習得するための研修を実施していました。営業では必要なスキルで、研修内容も現場で生かせる実践的な内容だと感じていました。
しかし、営業部門では、そのスキルを重要視しておらず、Off-JTで学んだ内容がOJTでフォローされないということが起こっていました。
次に、「Off-JTでの学びをOJTでフォローする職場環境が整っているか」というポイントです。
筆者の実施した年代別研修やコーチング研修などを受講した方は、終了したタイミングでは、「なるほど、良いことを聞いた」という感想を挙げていました。
ところが、現場に戻り、学んだことを試そうとしても、試す機会がなく、上司からも研修で学んだことを現場でやってみるように指導されることはなかったそうです。結局、研修から数か月経った頃、彼らは研修の内容をほとんど忘れてしまいました。
最後に、「参加者がOff-JTに参加する意義を見出しているか」というポイントです。
筆者が研修の受講者に対し、上司から研修内容が現場でどのように役立つか説明があったか、と尋ねたところ、「研修か、ゆっくりして来いよ」「研修中は溜まった内勤業務がはかどるね」と言われていたそうです。そのため、受講者自身も研修に向けて何か特別な準備をする、あるいは、事前に課題などを実施する、事前調査をするということもありませんでした。
このような状況であったため、研修に参加して何かを得ようというマインドセットは出来ていませんでした。
このようにOff-JTとOJTとをつなぐ仕組みがない状態では、Off-JTとOJTは別々に実施され、一貫した人財育成につながらない状況になります。
そして、Off-JTは参加すればよいものであるという文化が組織に定着します。前述した上司の発言は、このような組織文化の表れです。
この仕組みについては、Off-JTで学んだことを現場でいかに活用するかという研究が数多くなされています*2。つまり、多くの専門家が研究テーマにするほど、Off-JTで学んだことを現場に活かすことは、容易ではないのです。
ただ、多くの研究の結果として、単にOff-JTを実施すれば現場で活用されるわけではなく、活用するための仕組みは必要である、ということが発表されているのです。
皆さまの会社では、Off-JTとOJTとを繋げる仕組みが作られていますか?
研修設計の責任者や現場のマネージャー、研修の受講者に尋ねてみてはいかがでしょうか?
※2 学習転移に関する参考図書・論文の例
中原淳(2014)『研修開発入門 会社で「教える」、競争優位を「つくる」』、ダイヤモンド社
Baldwin T.T. & Ford,J.K., “Transfar of training A review & directions for future research,” Personnet Psychology, No41, 1988, pp.63-105.
小薗修、大内章子(2016)「能力・態度における研修効果に影響を与える要因とその関連性」『日本労務学会誌』第17巻1号、pp.50~68
元教育部長ハヤカワ
早川 勝夫
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