コラム

育成・教育研修部門は人的資本経営の推進にどう関わっていくか?
~ビジネスIDの視点から~

2022年は「人的資本経営元年」と言われています。育成・教育研修部門の皆さんは、人的資本経営の推進にどう関わっていけばよいのでしょうか? ビジネスID(インストラクショナルデザイン)の視点から考えてみました。

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2022年は「人的資本経営元年」

2022年は「人的資本経営元年」と言われています。

企業が持続的に価値を創造し成長していくには、中長期視点での投資が必要であり、中でも価値創造の源泉である「人」への投資を増やそう! 「人」を価値を生み出す大切な資本として捉えよう!というメッセージです。

これまでは、企業の人材マネジメントは主に人的資源の管理という視点で行われていましたが、持続的に成長していくには人的資本の価値を高めるという視点にシフトする必要があり、それには経営戦略と連動した人材戦略が必要だということになります(図1)。

「人的資本経営」は、経営や人事の文脈では今や聞かない日はないほどの頻出ワードですが、育成や教育研修に関わる皆さんはこの言葉を既に耳にしているでしょうか?

 

【図1】変革の方向性

【図1】変革の方向性

出典:経済産業省 持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート~

働く人を大切な資本、すなわち「コスト」ではなく「投資」の対象と捉え、多様な知や経験、スキル等の学び直し、エンゲージメントを通じて組織・個人の活性化を図っていくという人材戦略の在り方、また、人材戦略と経営戦略がしっかりと連動し、企業としての価値創出につながりやすい状態をつくるという考え方は、私たちサンライトヒューマンTDMCのミッション&ビジョンと重なるものです。それだけに、これらが本当に実践され、定着していってほしいと考えていますし、そのために私たちができるサポートを提供していきたいと考えています。

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人的資本経営の一翼を担う育成・教育研修担当部門

さて、人的資本経営そのものに関しては既に様々なレポートやメッセージが出されていますので、私たちからは、育成・教育研修担当部門の皆さんの視点で、どのようにこの流れに関わっていくのか?ということを、ビジネスID(BID)の視点で発信していきます。

皆さん、経営には口も手も出せないよ~、と感じられるでしょうか。

実はそんなことはありません。育成・教育研修部門も人的資本経営の一翼を担っているのです。図2に表現された「人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素」は、まさに皆さんが日々携わっている育成・教育研修の重要なポイントでもあり、皆さんは、これらを踏まえた設計~実行はもちろん、育成・教育研修の戦略と人材戦略(場合によってはその上の経営戦略も)をつなぐことができるのです。

【図2】人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素(3P・5Fモデル)

【図2】人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素(3P・5Fモデル)

出典:経済産業省 持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート~

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人材戦略に求められる視点とBIDの関係

今回は、図2における【視点1 経営戦略と人材戦略の連動】【視点2 As is-To beギャップの定量把握】【視点3 企業文化への定着】への関わりの概要をお話ししようと思います。

皆さんの組織では、既に人的資本経営に向けて舵を切るメッセージや、視点1,2,3に関する動きが出てきているでしょうか?

経営層や人事部門から発信されていない、あるいは発信はされているけれど実際の動きはまだ、という状況であっても、皆さんから発信し、各部門の取り組みをつなぐきっかけを作っていくことも可能なのです。そして、このときに視点1,2,3(特に初期は視点1,2)を忘れずに動くことが非常に大切です。

BIDを学び、実践されている方はピンとくると思います。

そうです。まさに、出入口の確認、そしてビジネスゴール、パフォーマンスゴールとトレーニングゴールの連動です(図3)。後者は今回の文脈では、経営戦略や人材戦略、育成・教育戦略の連動、と関連します。

BIDでは、教育研修の分析・設計において最初に持つ視点は、ビジネスゴールを意識したHuman Performance Improvement(HPI)視点です。経営戦略を踏まえて設定したビジネスゴールを見据え、目指すパフォーマンスを設定し、GAP分析を行って課題を明らかにします。その上で、Instructional Design(ID)視点で、HPI的課題への対応も含む教育研修のロードマップへと落とし込んでいきます。

 

【図3】BIDの視点

【図3】BIDの視点

※ちょうど今連載中のBID TREE® ワークショップで使っているBID TREE®フレーム(図4)が、このプロセスを形にしたものですね。

【図4】BID TREE®

【図4】BID TREE®

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育成・教育研修担当部門の皆さんだからできること

現在、「人的資本経営」の推進においては、経営層と人事部門の共通言語化や連携が不十分だという声も聞こえてきます。また、実際に人材戦略を立て、具体的施策に落とし込んでいくには、GAPの定量的把握だけでは限界があり、定性的かつ具体的なGAPを把握していくことが必要になります。

私たちは、ここをつなぐことができるのが育成・教育研修担当部門の皆さんだと考えています。

経営層や人事部門に対して戦略的かつより現場に近い視点で問題提起できたり、実際に育成・教育研修領域の戦略や施策に落とし込んで実行できたりするのが、本社と現場の両方に接している皆さんではないでしょうか。経営戦略-人材戦略-育成・教育戦略が連動して動くことで、経営層-人事部門-現場で働く方々、の3者がつながり、価値を生み出すサイクルができていきます。

このきっかけづくりはとても重要なものである分、難しそうに見えるかもしれません。ただ、BIDを実践している皆さんは、既に、BIDの3つの要素、HPI・ID・PM を組み合わせることで、経営戦略と人材戦略、育成・教育戦略をつなぐ視点を持って、育成や教育研修のグランドデザインやロードマップ、個別デザインを描き、実行しているはずです。この中で、皆さんには、育成や教育研修の範囲だけでは扱いきれない課題もたくさん見えているのではないでしょうか。それらの課題は、図2の3つの視点や5つの要素に紐づいているはずです。ぜひ、一度整理してみてください。

BIDには、戦略の連動、GAP把握、定着(を促すやり方)という3つの視点がしっかりと含まれています。あらためてこの視点で現状を見直してみると、具体的な人材戦略立案の要素に対して皆さんから提言を行い、経営戦略と人材戦略の連動と実行を後押ししていくことが可能になるのではないでしょうか。なお、提言時にはProject Management(PM)の視点もお忘れなく!

ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回はHPIの視点からの関りについて考えてみます。

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