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人財育成・研修設計に関するお役立ちコラム
みなさんは「学び」という言葉からどのような光景を思い浮かべるでしょうか。
多くの方は、日常の仕事を離れ、静かな研修室で講師の話に耳を傾ける姿を想像されるかもしれません。しかし、私たちが生きる現代は、VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)と呼ばれる、正解のない問いが次々と現れる時代です。
かつてのように、一度学んだ知識が一生通用するというモデルは、技術の急速な進化によって限界を迎えています。
今、企業に求められているのは、現場で起きた出来事から即座に学び、それを次のアクションに活かす力、すなわち組織の学習能力そのものです。
そこで今、改めて注目されているのが、ワークプレイスラーニング(WPL:職場学習)です。
その中でも特に、これまでの上司から部下へというタテの指導に、仲間同士の学び合いであるヨコの関係(ピアラーニング)を組み込む手法が、現場の成長を劇的にドライブさせることがわかってきました。
本記事では、なぜ今ヨコの繋がりが不可欠なのか、その本質を紐解いていきましょう。
目次
経験学習における「タテの支援」が抱える、目に見えない限界 ピアラーニングが学びの景色を変える3つの理由 深まりのタテと、広がりのヨコが生む相乗効果 【事例】伝統的組織がヨコの対話で手に入れたもの まとめ:組織のOSをアップデートしましょう人材育成の世界で最も信頼されている理論の一つに、デービッド・コルブの経験学習モデルがあります。
人は経験し、それを振り返り(内省)、そこから教訓(概念化)を得て、次の実践に活かすというサイクルです。
多くの企業が上司と部下の「タテの関係(1on1)」で経験学習を回そうとしていますが、そこには深い内省が生まれにくい隠れた理由が存在します。
上司と部下の間には、どうしても評価者と被評価者という力学が働きます。
部下は無意識のうちに、自分の失敗を小さく見せようとしたり、上司が喜びそうな正解の振り返りを提示したりしてしまいます。
これでは、自分自身の弱みと向き合う深い内省は生まれません。
上司は良かれと思って自身の成功体験に基づいた助言をしますが、前提条件が異なる現代では、その知恵がそのまま通用するとは限りません。
一対一の対話に終始すると、視点が自分と上司の二つだけに固定され、新しい可能性を見落とすバイアスの罠に陥りやすくなります。
多忙なマネジャーは、部下の日常のすべてを見ているわけではありません。
その結果、振り返りが抽象的な精神論や単なる進捗確認に陥り、現場のリアルな課題解決に結びつかない形骸化が起きてしまうのです。
【タテの支援が抱える隠れた限界】
※AIで生成したイメージ画像です
ここで注目したいのがピアラーニング(Peer Learning)です。
ピアとは、立場や経験が近い仲間を指します。教える側と教えられる側が固定された関係ではなく、対等な立場で学び合うプロセスです。
評価が介在しないことによる「心理的安全性」、現場の第一線にある「手触り感のある暗黙知の共有」、そして「他者の視点を通じた経験の再構築」によって、個人の学習効率を最大化します。
評価が介在しない仲間同士だからこそ、未完成のアイデアや、言葉にならない違和感、そして手痛い失敗をそのままテーブルに乗せることができます。
このさらけ出しができる安心感こそが、内省を深く、質の高いものへと変えてくれます。
最新のツールの使いこなしや、顧客との細かなコミュニケーションの機微など、現場の第一線にいる者同士だからこそ共有できる暗黙知があります。
上司が語る高次元の戦略論も大切ですが、隣の席の同僚が語る昨日のトラブルへの具体的な対処法の方が、即効性の高い学びとなることが多々あります。
学問の世界では、学びは他者との関係性の中で構築される(社会的構成主義)と考えられています。
自分とは異なる視点を持つ仲間との対話を通じて、自分の経験に新しい意味を見出していく。ピアラーニングは、まさにこの理想的な環境を提供します。
【ピアラーニングの価値】
※AIで生成したイメージ画像です
私たちが提唱するのは、タテの育成を捨てることではなく、タテとヨコを高度に掛け算することです。
| 軸 | 支援者 | 主な機能 | 学びの質 |
| タテ(垂直) | 上司・メンター | 視座の提供、専門性の担保 | 深まり:専門性の深化 |
| ヨコ(水平) | ピア(同僚など) | 多角度的なフィードバック、共感、暗黙知の共有 | 広がり:視点の多角化 |
例えば、週に一度のピアラーニングで、同僚同士で日常の失敗や成功を振り返り、学びの種を言葉にしておきます。
その上で、月に一度の上司との1on1に臨む。すると、部下はすでに内省が進んだ状態で対話できるため、上司は状況確認に時間を使わず、その学びを次の大きなプロジェクトにどう活かすかという一段高い次元の対話に集中できます。
これこそがタテとヨコの相乗効果です。
【タテとヨコの相乗効果】
※AIで生成したイメージ画像です
ある製造業での営業部門での事例をご紹介します。長年師弟関係のようなタテの育成を重んじてきましたが、若手の営業手法が停滞しているという課題を抱えていました。
若手社員は厳しい上司の前では分かりましたとしか言えず、小さなミスを隠す傾向がありました。
上司も背中を見て覚えろというスタイルで、効果的な振り返りができていませんでした。
入社3〜5年目の若手を対象に、週に45分間だけ集まる場を設けました。
ルールは、評価に関係させないことと、アドバイスではなく、相手に問いかけることの二つです。
ある若手が共有したクレーム対応の失敗談に対し、他のメンバーが自分はこうやって乗り越えたという独自のコツを共有しました。
情報共有ツールにも載っていない現場の裏マニュアルが、ヨコの繋がりで次々と可視化されたのです。
結果、若手たちの自信(自己効力感)が高まり、営業成績が向上しただけでなく、上司への報告も驚くほど誠実で事実に基づいたものへと変化しました。
ヨコの安心感が、タテの信頼関係をも再構築したのです。
ピアラーニングは、単なる教育手法の一つではありません。それは組織のOSを管理による統制から自律的な相互学習へとアップデートするプロセスです。
人事担当者の皆様がまず取り組むべきは、立派な研修プログラムを組むことではなく、現場にヨコの対話が自然発生するような場と仕掛けをデザインすることです。
次回は、このピアラーニングが、副次的に次世代リーダーをどのように育んでいくのか、そのメカニズムについて詳しくお伝えします。
「研修は改善されたが、現場の行動変容や成果に繋がらない」「社員の自律的な学びや、上司の育成支援が進まない」。 そんな人材育成の壁に直面していませんか? 本講座は、不確実なビジネス環境下において、「職場そのものを学びの場に変える」ための新たなアプローチ、「WPL(ワークプレイスラーニング)」を習得するプログラムです。
企業内の人の成長に関することであれば、どのようなことでもお気軽にご相談ください。
早川 勝夫/ Hayakawa Katsuo
ラーニングプロセスコンサルタント
薬剤師、教授システム学修士、認定アクションラーニングコーチ、コンプライアンスオフィサー
外資系製薬会社で、営業を経験したのち、営業戦略や新製品発売プロジェクト、営業生産性の向上プロジェクト、営業の人財開発等にマネジメントの立場で従事してきました。
HPIに基づいた複数の仕組みづくりや、自律的に学ぶ人財が育つ仕組みづくりを通して、個人と組織のパフォーマンスの最大化を進めてきました。
これらの経験から、多くの方々にBIDやWPLの有用性を知っていただきたく、皆さまが実践的にご活用できるよう、ご支援していければと考えております。
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