用語解説

【WPLキャンバスの活用】
Step3.従業員の行動「経験学習マインドセット」を考える

従業員と組織がともに成長するために、職場での学びである「ワークプレイスラーニング※1」を効果的に推進していく重要性が高まっています。

本記事では、その実現に向けて職場学習を推進するための要素を整理・可視化するフレームワーク「WPLキャンバス※2」の活用方法をご紹介します。

全6回の連載第3回となる今回は、WPL推進の3者(従業員、ラインマネジャー、エグゼクティブ)の中で、「従業員の行動」について考えていきましょう。

※1 本記事では、「ワークプレイスラーニング」を基本表記としつつ、「WPLキャンバス」や「WPLグランドデザイン」など一部の用語では略称「WPL」も使用しています。

※2 「WPLキャンバス」はサンライトヒューマンTDMC(株)の登録商標です。本記事ではⓇマークを省略しています。

1

従業員は“経験学習マインドセット”を持っているか?

前回、WPLキャンバスの「未来人財要件」の決定方法と評価指標についてご紹介しました。

本記事では、「WPL推進の3者(従業員、ラインマネジャー、エグゼクティブ)の行動」のうち、育成対象者となる従業員の行動について解説していきます。

 

図1 WPLキャンバス(例)

WPLキャンバスの従業員の行動を考える

ワークプレイスラーニング推進において従業員本人の行動として最も求められるのは、「経験学習」を積み重ねることです。経験学習モデルが効果的に機能すると、実践的な知識を獲得し、問題解決能力が向上し、モチベーションも向上するなど多面的な成長が見込めます。

未来で活躍できる人財になるためには、従業員本人が自律的に「具体的経験」を丁寧に振り返り(内省的観察)教訓を紡ぎ出し、次に自身の職務上の実践の場で教訓を生かし経験値を上げていく(積極的行動)というチャレンジを試みていくことが重要です。

この経験学習モデルを回す燃料となるのが「経験学習マインドセット」です。

批判的内省」「学習志向」「自主的挑戦」「仕事の意味」の4つのマインドセットを従業員が持つことで、個人の経験学習の効果を高めることができます。自社で重視されている他のマインドセットに加えて整理することで、オリジナルのマインドセットを作成できるでしょう。

 

【批判的内省】
批判的に自己反省することを通じて、自己の中にある前提を問い直すマインドセットです。自身の過去の成功体験や専門性に頼るのではなく、常に別の見方、別の考え方、別の解決策がないか探求する姿勢が求められます。

【学習志向】
活動の焦点を「評価」や「承認」から「学び」へとシフトするマインドセットです。これにより、自身の経験学習モデルをより効果的に機能させることができます。

【自主的挑戦】
自発的に挑戦的な仕事を探し、自己の成長を促進するマインドセットです。これまでに経験したことがない難しい課題に直面すると、従来の知識やスキルが通用せず、新しい知識やスキルを獲得しやすくなります。

【仕事の意味】
仕事の意味を見いだし、内発的な動機付けを強化する状態を目指すマインドセットです。仕事のパフォーマンスに対して最もインパクトを与える心理状態は「仕事の意味性」、つまり個人が自分の仕事にどのような価値や重要性を見いだしているかであると考えられています。

 

図2 経験学習マインドセット

経験学習マインドセットの要素と実践サイクル

 

2

「経験学習マインドセット」をアセスメントするには

従業員の経験学習マインドセットの4つのカテゴリーごとに代表的な設問を設定したアセスメントシートを紹介します。
自社で重視されている他のマインドセットがある場合は、そちらも設問まで作成しましょう。

アセスメント指標が策定できたら、他の指標と併せて、プロジェクト開始時に測定しておきましょう。これにより、前後比較が可能となります。
従業員本人のセルフアセスメントだけでなく、上司(ラインマネジャー)を含めた他者評価も含めることで、本人に多くの気づきを与えることができます。

 

図3 経験学習マインドセット アセスメントシート(例)

経験学習マインドセットアセスメントシートのSample

3

「経験学習マインドセット」決定までのポイント

経験学習マインドセットと評価指標を決定するポイントをご紹介します。

【ポイント】

⚫「職場」に一層アジャストするために、また、今後、このチェック項目を職場で活用していくためにも、すでに経験学習モデルを効果的に回せているようなハイパフォーマーにヒアリングを行い、項目をアレンジしていくとよいでしょう。

⚫指標のドラフトができた段階で、従業員(本人)とラインマネジャー(上司)に評価しづらかったところがないか、過不足点はないかなどをチェックしてもらい、それらを反映させていくと、よりよい指標になっていくでしょう。

検討にあたっては、次のように進めます。

  1. 参加者を選定する
    エグゼクティブ、ラインマネジャー(プロジェクトメンバー)、人財育成の専門家など、適切な人々を招待します。

  2. ファシリテーターを置く
    WPLマネジャーの役割を担っている人が担当するとよいでしょう。
    グループディスカッションを効果的に進行させるために、コミュニケーションスキルとファシリテーションスキルを活用します。適切な質問を投げかけ、参加者の意見やアイデアを引き出します。 

    ※WPLマネジャーは、WPLの実行とモニタリングの役割を担う者のこと。

  3. ドラフトを用意し、効果的かつ効率的な議論の場にする
    WPLマネジャーの役割を担っている人が用意するとよいでしょう。
    ゼロからつくり上げると時間も要するため、ある程度の仮説で、アセスメントシートをドラフトしておくと効果的に決定することができます。

 

図4 WPLキャンバス(例)

WPLキャンバスの従業員の行動(経験学習マインドセット)の記載例

4

まとめ

本記事では、従業員が持つべき「経験学習マインドセット」と評価指標の決定方法をご説明しました。

次回は、ラインマネジャーの行動「部下の学習支援」の決定についてご紹介します。


◀◀【WPLキャンバスの活用】Step2.「未来人財要件」の決定方法と評価指標

【WPLキャンバスの活用】Step4.ラインマネジャーの行動「部下の学習支援」を考える▶▶


【参考情報】
本記事の内容は弊社刊行書籍やホームページをご覧いただくことで、より深く学んでいただけます。

詳細検索

キーワードで探す

人気の記事

“現場”の人材育成を再考する~LPDカンファレンス2025開催レポート~

“現場”の人材育成を再考する
~LPDカンファレンス2025開催レポート~

農水省の「普及指導員」育成に学ぶ!企業の育成再設計を成功させる3視点

農水省の「普及指導員」育成に学ぶ!
企業の育成再設計を成功させる3視点

ワークプレイスラーニングとは?職場での学びを最大化するヒント

ワークプレイスラーニングとは?
職場での学びを最大化するヒントを紹介

ANAの訓練・研修から学ぶインストラクショナルデザインの活用

ANAの訓練・研修から学ぶインストラクショナルデザインの活用

インストラクショナルデザインとは?求められる背景や代表的理論を解説!

インストラクショナルデザインとは?
求められる背景や代表的理論を解説!

公式SNSで最新情報配信中

facebook youtube
close

LABO 記事検索

カテゴリー

視点

テーマ

タグ

おすすめの記事

close
無料ダウンロード

無料ダウンロード

企業内教育に
活用できる
フレーム配布中