用語解説

【WPLキャンバスの活用】 
Step4.ラインマネジャーの行動「部下の学習支援」を考える

従業員と組織がともに成長するために、職場での学びである「ワークプレイスラーニング※1」を効果的に推進していく重要性が高まってきています。

本記事では、その実現に向けて職場学習を推進するための要素を整理・可視化するフレームワーク「WPLキャンバス※2」の活用方法をご紹介します。

全6回の連載第4回となる今回は、WPL推進の3者(従業員、ラインマネジャー、エグゼクティブ)の中で、「ラインマネジャーの行動」について考えていきましょう。

※1 本記事では、「ワークプレイスラーニング」を基本表記としつつ、「WPLキャンバス」や「WPLグランドデザイン」など一部の用語では略称「WPL」も使用しています。

※2 「WPLキャンバス」はサンライトヒューマンTDMC(株)の登録商標です。本記事ではⓇマークを省略しています。

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ラインマネジャーが担う“部下の学習支援”の本質とは?

前回は、「WPL推進の3者(従業員、ラインマネジャー、エグゼクティブ)の行動」のうち、従業員の行動「経験学習マインドセット」の決定方法と評価指標についてご紹介しました。

本記事では、ラインマネジャーの行動について解説していきます。

 

図1 WPLキャンバス(例)

ワークプレイスラーニング推進においてラインマネジャーの行動として最も求められるのは、「部下の学習支援」です。部下の学習支援とは、部下の「経験学習」が効果的に実施されるように支援することを指します。
つまり、従業員の行動、経験学習マインドセットが高まるように支援をしていくこととなります。

「経験学習モデル」がWPLのエンジンであれば、本人の経験学習マインドセットは燃料、そして、ラインマネジャーの支援は、良質なエンジンオイルを注ぐような行為であるとイメージするとわかりやすいでしょう。

学習支援には、主に「成長支援」「自律支援」「内省支援」の3つの要素があります。この3つは、それぞれ育成対象者のマインドセットに直接影響を与えうる要素です。
これらの要素を部下育成の軸とすることで、より効果的な未来人財の育成が可能となります。

人事異動などの影響もあり上司と部下の関係は、数年後には変わっているかもしれません。上司が“今”学習支援を行っている成果が出るのは、数年後、自分の部下ではなくなった後かもしれません。しかし、部下の成長を願って、中長期的な視点で支援を行うマインドが求められます。

 

【成長支援】
部下の「学習志向」を高めることを目的としたプロセスです。ラインマネジャーは「傾聴」と「質問」を駆使し、部下の学習プロセスを効果的にサポートします。

【自律支援】
部下の自律性を促進するために、権限を委譲し、動機付けを行うプロセスです。部下に「仕事の意味」を感じさせることにつながります。
ラインマネジャーは、コーチング力を強化するだけでなく、部下に権限委譲し、自律的に動けるよう励ますことが求められます。

【内省支援】
部下が自己の行動や経験を深く振り返り、そこから学ぶことを奨励するプロセスです。企業で働く管理職は内省よりもアクションを優先させる傾向にあると言われており、ラインマネジャーがいかに内省支援を意識的に行うかが重要となります。
「自分が当たり前だと思っている前提・価値観・信念」を問い直すような「批判的内省」を促します。また、チーム内で共同で振り返りを行う「チーム内省」が活発になると、チームの革新性、有効性、業績が高くなることも明らかになっています。

 

図2 経験学習マインドセットとラインマネジャーが行う部下の学習支援の関係性

経験学習マインドセットとラインマネジャーが行う部下の学習支援の関係性

 

2

「部下の学習支援」をアセスメントする

ラインマネジャーによる部下の学習支援のための行動について、成長支援・自律支援・内省支援の3つのカテゴリーごとに代表的な設問を設定したアセスメントシートを紹介します。

アセスメント指標が設定できたら、他の指標とともに、プロジェクト開始時に測定しておきましょう。それにより、学習の前と後の比較が可能となります。ラインマネジャーのセルフアセスメントだけでなく、部下(従業員)評価も取ると、ラインマネジャー自身も多くの気づきを得ることができます。

 

図3 部下の学習支援 アセスメントシート(例)

部下の学習支援 アセスメントシート

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「部下の学習支援」決定までのポイント

部下の学習支援と評価指標を決定するポイントをご紹介します。

【ポイント】

⚫プロジェクトメンバーの中で、セルフアセスメントをして、わかりにくいところなどがないかを確認してもらい、より職場の実態に合ったアレンジしておくとよいでしょう。

⚫運用がスタートした後で違和感のある設問が見つかったり、追加したほうがよいところがあったりした場合には、必要に応じてアレンジしていくとよいでしょう。

検討にあたっては、次のように進めます。

  1. 参加者を選定する
    エグゼクティブ、ラインマネジャー(プロジェクトメンバー)、人財育成の専門家など、適切な人々を招待します。

  2. ファシリテーターを置く
    WPLマネジャーの役割を担っている人が担当するとよいでしょう。グループディスカッションを効果的に進行させるために、コミュニケーションスキルとファシリテーションスキルを活用します。適切な質問を投げかけ、参加者の意見やアイデアを引き出します。 

    ※WPLマネジャーは、WPLの実行とモニタリングの役割を担う者のこと。

  3. ドラフトを用意し、効果的かつ効率的な議論の場にする
    WPLマネジャーの役割を担っている人が用意するとよいでしょう。ゼロからつくり上げると時間も要するため、ある程度の仮説で、アセスメントシートをドラフトしておくと効果的に決定することができます。

 

図4 WPLキャンバス(例)WPLキャンバス

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まとめ

本記事では、ラインマネジャーに必要な「部下の学習支援」と評価指標の決定方法をご説明しました。

次回は、エグゼクティブの行動「職場学習環境づくり」の決定方法と評価指標についてご紹介します。


◀◀【WPLキャンバスの活用】Step3.従業員の行動「経験学習マインドセット」を考える 

【WPLキャンバスの活用】Step5.エグゼクティブの行動「職場学習環境づくり」を考える▶▶ 


【参考情報】
本記事の内容は弊社刊行書籍やホームページをご覧いただくことで、より深く学んでいただけます。

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