用語解説

【WPLキャンバスの活用】 
Step5.エグゼクティブの行動「職場学習環境づくり」を考える

従業員と組織がともに成長するために、職場での学びである「ワークプレイスラーニング※1」を効果的に推進していく重要性が高まってきています。

本記事では、その実現に向けて職場学習を推進するための要素を整理・可視化するフレームワーク「WPLキャンバス※2」の活用方法をご紹介します。

全6回の連載第5回となる今回は、WPL推進の3者(従業員、ラインマネジャー、エグゼクティブ)の中で、「エグゼクティブの行動」について考えていきましょう。

※1 本記事では、「ワークプレイスラーニング」を基本表記としつつ、「WPLキャンバス」や「WPLグランドデザイン」など一部の用語では略称「WPL」も使用しています。

※2 「WPLキャンバス」はサンライトヒューマンTDMC(株)の登録商標です。本記事ではⓇマークを省略しています。

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エグゼクティブが担う責任「職場学習環境づくり」

前回は、「WPL推進の3者(従業員、ラインマネジャー、エグゼクティブ)の行動」のうち、ラインマネジャーの行動「部下の学習支援」の決定方法と評価指標についてご紹介しました。

本記事では、いよいよエグゼクティブの行動について解説していきます。

図1 WPLキャンバス(例)WPLキャンバス

ワークプレイスラーニング推進におけるエグゼクティブの行動として最も求められるのは、「職場学習環境づくり」です。

職場において、より適切な学習環境をつくり上げるためには、従業員やラインマネジャーに任せるだけでなく、エグゼクティブが自らの責任として、環境づくりに取り組むことが求められます。
従業員が効果的に「経験学習モデル」を回し、ラインマネジャーが部下に対して効果的な学習支援が行えるように、適切な職場学習環境を整えることこそが、エグゼクティブに求められる行動なのです。

ここでは、エグゼクティブが支援してつくる職場学習環境の主な指標「仕事のやりがいの醸成」「挑戦的仕事の提供」「心理的安全性の提供」「越境コミュニティの提供」について解説します。

エグゼクティブもラインマネジャー同様に、配下にいる部下たちの未来に向けた成長を願って、中長期的な視点で、これらの取り組みを行っていくマインドが求められます。短期的な業績達成が求められる中で、この中長期的な人財育成の取り組みとのバランスを保ち、組織運営をしていくことが大切です。

 

【仕事のやりがいの醸成】
仕事に対しての楽しみや内発的な動機付け、没頭している状態を従業員にもたらすことです。これはポジティブ心理学に基づいた考えであり、従業員が、自己成長に打ち込むあまり過剰な負荷となり燃え尽きないようにするために重要な要素です。

【挑戦的仕事の提供】
「新事業の立ち上げ」「多様な職務を同時に担う」「さまざまなステークホルダーとの協業」など、挑戦的な仕事を計画的に提供することを指します。従業員がこれまでの経験則だけでは乗り越えられないような仕事を提供することで、従来にないレベルで深く思考を促し、非連続的な成長を促進します。

【心理的安全性の提供】
職場の従業員同士が自由に意見を表明し、間違いを恐れずにチャレンジできる安全な環境を提供することです。

【越境コミュニティの提供】
職場の環境を越えて、全く新しい環境や異なるバックグラウンドを持つ人々との交流を促進することです。越境コミュニティの提供により、従業員は自身の職場での経験学習では得られない異なる知見やスキルに触れて広い視野を持ち、成長へと導かれます。

図2 エグゼクティブによる「職場学習環境づくり」

 

エグゼクティブによる「職場学習環境づくり」

 

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「職場学習環境づくり」を アセスメントする

エグゼクティブによる職場学習環境づくりの4つのカテゴリー「心理的安全性の提供」「仕事のやりがいの醸成」「挑戦的仕事の提供」「越境コミュニティの提供」ごとに代表的な設問を設定したアセスメントシートを紹介します。

アセスメント指標が設定できたら、他の指標と併せて、プロジェクト開始時に測定しておくとよいでしょう。それにより、学習前と後の比較が可能となります。

 

図3 職場学習環境づくり アセスメントシート(例)

職場学習環境づくり アセスメントシート

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「職場学習環境づくり」決定までのポイント

職場学習環境づくりと評価指標を決定するポイントをご紹介します。

【ポイント】

挑戦的仕事の提供や越境コミュニティの提供の項目については、1つの職場内で完結しないことも生じてくるため、エグゼクティブやシニアエグゼクティブが情報交換を行いながら、よりよい職場学習環境にしていくことが求められます。

検討にあたっては、次のように進めます。

  1. 参加者を選定する
    シニアエグゼクティブ、エグゼクティブ、人財育成の専門家など、適切な人々を招待します。

  2. ファシリテーターを置く
    WPLマネジャーの役割を担っている人が担当するとよいでしょう。グループディスカッションを効果的に進行させるために、コミュニケーションスキルとファシリテーションスキルを活用します。適切な質問を投げかけ、参加者の意見やアイデアを引き出します。

    ※WPLマネジャーは、WPLの実行とモニタリングの役割を担う者のこと。

  3. ドラフトを用意し、効果的かつ効率的な議論の場にする
    WPLマネジャーの役割を担っている人が用意するとよいでしょう。ゼロからつくり上げると時間を要するため、ある程度の仮説をもってアセスメントシートをドラフトしておくと効果的に決定することができます。

図4 WPLキャンバス(例)

WPLキャンバス5

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まとめ

本記事では、エグゼクティブが責任を持つ「職場学習環境づくり」と評価指標の決定方法をご説明しました。
エグゼクティブは、従業員が効果的に経験学習モデルを回し、ラインマネジャーが部下に対して効果的な学習支援が行えるように、自らの責任として適切な環境づくりに取り組むことが求められます。

ようやく、WPLキャンバスの各要素が埋まりました。

次回は、注力する指標やゴールを定め、いよいよWPLキャンバスを完成させます。


◀◀【WPLキャンバスの活用】Step4.ラインマネジャーの行動「部下の学習支援」を考える

【WPLキャンバスの活用】  Step6.WPLキャンバスの完成~注力指標と具体的ゴール~▶▶ 


【参考情報】
本記事の内容は弊社刊行書籍やホームページをご覧いただくことで、より深く学んでいただけます。

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