コラム

人的資本経営に基づく人財開発をどのように行うのか

2022年8月25日に開催された「人的資本経営コンソーシアム」設立総会。「人的資本経営コンソーシアム」は、経済産業省が主体となって広く会員を求め、開催前日までに会員登録を行った企業は320法人にのぼりました。本記事では、人的資本経営コンソーシアム設立総会の設立の背景をひも解き、日本が抱える人的資本経営の課題、実践するための視点や手法についてご紹介します。

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「人的資本経営コンソーシアム」設立の背景

2022年8月25日(木)に人的資本経営コンソーシアム設立総会が開催されました。本会は経済産業省が主体となって広く会員を求め、開催前日までに会員登録を行った企業は320法人あったそうです。経産省が人的資本経営コンソーシアムを設立した背景は、大きく2つあるようです。「人的資本経営の視点」「国内外で進む人的資本情報の開示に関する議論」です。

  1. 人的資本経営の視点

    「人的資本経営」とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげることを言います。2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードには、人的資本への投資について、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ具体的に情報を開示するべきであること等が記載されました。これを基に経産省はワークプロジェクトを立ち上げ、2022年5月に人材版伊藤レポート 2.0を公表しました。

  2. 国内外で進む人的資本情報の開示に関する議論

    企業価値評価における人的資本の重要性が高まる中、企業による人的資本情報の開示の在り方について、国内外で議論が進んでいます。海外では、IFRS財団が2021年11月に国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設置を公表し、サステナビリティ情報に関する開示基準の開発を進めています。
    日本では、有価証券報告書において、中長期的な企業価値向上における人材戦略の重要性を踏まえた「人材育成方針」や「社内環境整備方針」について記載することが議論されています。また、女性管理職の比率や男女間賃金格差等を具体的な開示項目とする等、人的資本に関して、一歩踏み込んで情報を開示することも議論されています。

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日本企業が抱える「人的資本経営」に関する課題

とはいえ、日本の企業は、今までヒトを大切にする文化を維持してきているのではないか? 今さらなぜ人的資本経営なのかと疑問を持たれる方もおられると思います。

そのような疑問に、前述のレポートをまとめられた一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤 邦雄先生は、経産省主催のオンラインセミナー「人的資本経営という変革への道筋」の基調講演で、日本企業が抱える「人的資本経営」に関する課題を的確に述べられています。

まずは、人材に関する現状を把握することが、人的資本経営を推進する一員となるはじめの一歩かもしれません。

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人的資本経営に基づく人材育成のポイント

しかしながら、人的資本経営を理解はしても、今後、どのように行えば良いのだろうかと迷われる方も多いのではないでしょうか。

これまで実施してきたOJTや研修に加えて、何をどうすればよいのだろうかと。あるいは、既に人材開発に投資をされてきた方は、実施してきているのに効果が出ていない、成果が確認できない、または、経営と統合した人材育成が実施できていない等のお悩みをお持ちではないでしょうか。

そこで、ここでは、人的資本経営に基づく人材育成のポイントをご紹介します。

  1. 学ばせ方を改め学習者を主体とした学習方法を取り入れる

    日本企業がこれまで行ってきた人材開発やそのためのOff-JTは、「研修」というワードで括られている場合が多いと思います。しかし、近年では、主催者主体の研修から学習者主体の研修や研修以外の学習方法が増大してきており、マスメディアで取り上げられる機会も増えてきています。
    学ばせ方を改め学習者を主体とした学習方法を取り入れることが大切です。

  2. 人材開発投資の成果を明確化していく

    企業が投資をするからにはリターンが求められますが、人への投資のリターンを明確に求められることも増えてきているようです。
    人材開発投資の成果を明確にするということも重要なポイントになります。

近年は人材開発の考え方、やり方は進化しているものの、真に経営戦略に紐づく人材開発を導入できている企業はまだ少ないのが現状ではないでしょうか。

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USAで主流のHPIメソッド

前述の伊藤先生の基調講演で、USAにおける人材投資額の状況が示されていました。そこで、USAでは、どのような人材開発方法をとっているのかを確認したいと思います。

USAの主だった企業では、ATD(Association for Talent Development)が示すHPI(Human Performance Improvement)というメソッドを用いて人材開発を行っています。ATDが示すHPIメソッドは、経営課題に直結する人的課題を解決する方法論です。

ATDは、毎年、学会のような会員の会合を持ち、会員のHPIの実践方法やその成果に関しての情報交換を行います。ATDは、HPIの実践結果の積み重ねを基に、時間をかけてHPIメソッドをアップデートしてきました。ATDに参加する企業は、人材開発に投資し成果を生みだしてきました。日本の複数の大企業もATDに参加されているようです。

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SLHのオリジナルメソッドBID

私たちサンライトヒューマンTDMCが提唱するビジネスインストラクショナルデザイン(Business Instructional Design®)(以下、BID)は、HPIにインストラクショナルデザイン(以下、ID)とプロジェクトマネジメント(以下、PM)の要素を組み合わせ、経営課題に沿った人財開発を実施するためのメソッドです。

ATDが示すHPIメソッドをそのまま日本企業に導入しようとすると、文化の違いから受け入れられない場合があります。また、仕組みは構築できても運用段階で頓挫することもあります。

私たちは、これをどのように日本の企業における人財育成に活かすかを考え、BIDというメソッドを提案しています。BIDでは、HPIを用いて人財開発を進める際には、全体の運用をプロジェクトとして捉えてマネジメントする方法を組み合わせます。また、人材開発プログラムや具体的な研修の開発や設計が疎かだと、成果に結びつかない可能性が高いので、開発や設計にはIDを用いて効率的・効果的で成果を得て確認できる方法を採ります。つまり、BIDは、HPIとIDのメソッドを活用して仕組みを構築し、運用はPMで進めるというやり方です。

BIDでは、それぞれの企業が進めてきた人財開発を基にして、HPIを導入する方法を企業の方と一緒になり構築します。また、運用にはPMを用いて確実に運用できるように支援します。人的資本経営の強化を目指し、本格的に人財開発の見直しを検討されている方は、是非一度、BIDの世界においでくださいませ。

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