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レイヤーモデルとは、熊本大学大学院教授システム学専攻教授・専攻長の鈴木克明先生が提唱するeラーニングの質保証を5つの観点から捉えて整理したモデルです。5つのレイヤーごとに達成指標と、そこに到達するために役立つインストラクショナルデザインの理論モデルが示されており、eラーニングを設計・開発する際のゴール設定(どのレベルを目指してコンテンツの設計・開発を行うか)や開発したeラーニングコンテンツやシステムを評価・改善する上で役立つモデルです。
レイヤーモデルでは、eラーニングの質を5つのレベルに分けて整理しています。
学習環境分析手法やメディア選択モデルをあてはめて、e ラーニング環境が学習者にマイナスの影響を与えていないかどうかを確認する。安定度や安心感が達成指標となる。
職務分析やニーズ分析手法を用いて、提供している学習内容に問題がないかを確認する。「自分が教えたいこと」から「この科目で教えるべきこと」へ発想を転換し、カリキュラムにおける科目の位置づけも検討する。
情報デザインの知見を主として利用し、わかりやすいコンテンツ作りを目指す。ユーザビリティやテクニカルライティングの原則に照らして分かりやすいかどうかを、形成的評価やラピッドプロトタイピング手法で確認・向上していく。
ID モデルを応用し、学習課題の性質と学習者の特性に応じた学びやすさを追求する。分かりやすさのレベルを超えた達成指標として、学習アクティビティのデザインや協同的学習も視野に入れる。
ID モデルの魅力の側面を満たすことで、学びがいや帰属意識、没入感や継続的学習意欲を目指す。動機づけ設計モデルや成人学習学の知見が応用できる。
この5つのレイヤーの順番が非常に重要で、上位のレベルを達成するためには、下位レベルから順にクリアしていく必要があるという点がポイントです。
インターネット通信が遅いといった「いらつきのなさ」は精神衛生上の要件なのでレベル-1と言えます。コロナ禍で急遽オンライン化した企業内教育においては、まずはこのレベル―1や「うそのなさ」のレベル0に注力していただくのがおすすめです。
レベル-1とレベル0の指標をクリアできると、「わかりやすさ」のレベル1、「学びやすさ」のレベル2、「学びたさ」のレベル3などの上のレイヤーで改善ポイントを整理することができるようになります。
eラーニングのコンテンツやシステムの開発は、どの範囲で何にこだわるかによって、開発の工数や予算も大きく変わってきます。開発に関わるプロジェクトメンバーやコンテンツ開発を依頼する講師と、どのレベルを目指して開発するか視界合わせができると良いでしょう。
また開発したeラーニングコンテンツやシステムについて、現状を評価する上でも、レイヤーモデルはとても役立ちます。5つのレベルの達成指標に照らし合わせて評価することで、現状クリアできているのはどのレベルかを明らかにすることができます。そして到達できていないレベルを、対応するインストラクショナルデザインの技法を使って、下位から順に改善していくと、効果的、効率的に改善していくことができます。
各レベルに対応する101のインストラクショナルデザインの技法が紹介されています。
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