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生産性向上のために約半数の企業が行っているOff-JT。そのメリットとデメリットにはどんなことがあるのでしょうか。また、何をもってOff-JTの成果が出たと言えるのでしょうか。一緒に考えてみましょう。
Off–JTとはOff-the-Job Trainingの略で、実務から離れて行う教育研修のことです。基本的には実業務では教えにくいこと、教えられないことを教え、習得してもらうことを目的としています。一般的に企業で「研修」というと、Off-JTを指します。
厚生労働省の令和3年度「能力開発基本調査*1」では、Off-JTに費用支出した企業は、令和元年度調査までは50%を越えていました。その後、令和2年度、3年度では45%程度に低下しています。
しかし、少なくとも半数弱の企業では、Off-JTによる人財開発に出資しています。また、労働者側から見ると、Off-JTを受講した労働者は30.2%で前回調査より0.3ポイント上昇しています。
この調査結果から、何らかの理由によりOff-JTによる人財育成への投資を控える企業が増えているものの、半数弱の企業はまだOff-JTへの期待を持っていると考えられるのではないでしょうか。
企業がOff-JTを行うメリットは3つ考えられます。
1つ目に、集中的に現場で必要なスキルや知識を学ぶことができます。通常の業務を行う中で、仕事に必要なプラスアルファの知識を身につけることは容易ではありません。通常の業務から離れ、必要な知識やスキルを身につけるための時間をしっかりと確保することで学習が進みます。
2つ目に、体系的に一定の知識を基礎から応用まで幅広く学べるため、点在する情報を個人で収集するよりも効率的に学習でき、理解が向上します。
3つ目に、Off-JTが教育の一部を担うことで、現場での指導者の負担を軽減できます。
一方、企業がOff-JTを行うデメリットは2つ考えられます。
まず、コストが発生することです。研修場所の確保や研修場所までの移動、専門家に依頼する場合はその経費がかかります。冒頭で示したように、企業の約半数は、Off-JTに出資していません。
そして、実践に生かせているか不明瞭で、成果を把握しきれないことが多い点も挙げられます。
Off-JTを実施されている経営者の中には、コストに見合った成果が出ているのか、Off-JTで学んだことが実務で生かせているのか、疑問を持たれている方もいるのではないでしょうか。
もし経営者の方が、人財開発の責任者の方に、「Off-JTの成果は出ているのか」問うたとします。そして、「成果は出ています」「研修受講後の調査では、受講者の満足度は非常に高く、また、現場マネージャーの評価も高いです」という回答を得たとします。あなたが経営者の立場だとしたら 、この回答に満足できますか?
本来、Off-JTで学んだ方は、職場に戻り、学んだことをアプトプットできなければなりません。
例えば、Off-JTでビジネスマナーやロジカルシンキング、リーダーシップといった知識を体系立てて習得するとします。この場合、職場に戻った後、「マナーを意識した行動がみられるようになった」「ロジカルに物事を捉えて発言するようになった」「リーダーとしての発話が増え、行動に現れてきた」という状況になっているのが理想です。
前述の「Off-JTの成果は出ているのか」という問いに対して、「Off-JT前後で何らかのパフォーマンスが変化した」という回答が得られないようであれば、Off-JTはその成果を発揮できていないことになります。
私たちは、ワークプレイスラーニング*2の視点でOff-JTでの学びを現場のパフォーマンスに結びつけることが重要だと考えています。
あなたが経営者であれば、人財開発の責任者に、Off-JTが現場でのパフォーマンスにどのような影響を与えているのか、問うてみてください。
あなたが人財開発の責任者であれば、経営者の方々にOff-JTの成果を示すことができる状態か、自問自答してみてください。
どのような回答が得られるでしょうか。
※2 個人や組織の成長を実現する目的で実施される学習とその他の介入の統合的な方法。Rothwell&Sredl 2000の定義「個人や組織のパフォーマンスを向上する」を読み替え。
元教育部長ハヤカワ
早川 勝夫
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