魔法の人材教育

社員を「自ら考えて育つ人材」に…
「インストラクショナルデザイン(ID)」とは?
【連載 第6回】企業研修で最大限の成果を出すための
「プラン」の設計法

サンライトヒューマンTDMC代表の森田 晃子です。 前回は、伸び悩む社員のパフォーマンスについて、その原因を分類・分析する方法を解説しました。今回は、企業研修で最大限の成果を出すための「プラン」の設計法を見ていきます。

森田 晃子(2019)『改訂版 魔法の人材教育』幻冬舎

研修で高められるのは対象者の知識・スキルだけ…

前回の続きです。

パフォーマンスが伸び悩む原因を掘り下げてみることで、研修では解決できない問題があることがおわかりいただけましたでしょうか。

実は、研修で解決が可能なのは、④コーチング・メンタリングと⑤知識・スキルと⑥資質・パーソナリティが主だといわれています。

ただし、⑥資質・パーソナリティの問題は、研修では解決できず、採用基準の見直しの方が優先順位が高い場合も多いです。また、コーチングの問題も同様で、マネジメントの仕組みの見直しなどが功を奏することも少なくありません。

つまり、研修が効果的な解決策になるのは、対象者本人の知識やスキルが不足している場合などに限られます。当たり前だと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、すべての課題を研修で解決できると思っている(思っていないにしても、結果的にそういう設計にしている)という企業が非常に多いのです。これでは、いくらコストをかけて研修を行ったとしても、思うような成果は出せません。

ここで一番いいたいことは、パフォーマンスが向上しない原因を深く検討せず、課題が見えないまま、安易に研修という手段を選択することに注意が必要であるということです。研修以外の施策としては、業績評価システムの導入、キャリア開発、コーチング・メンタリングの改善、報酬の改善、環境の改善、情報システムの導入、ナレッジマネジメントの構築、ジョブエイドの作成、業務設計、リーダーシップ開発、組織設計、人材配置の改善などがあります。

本書をお読みの方の中には、「研修以外は私の領域ではないから関係ない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。目の前の業務だけを考えれば、確かにおっしゃるとおりです。しかし、私たちが目指すのは、「自ら学び、自ら考え、自ら行動する人材」の育成です。そのためには、人材教育担当者自身も与えられたタスクをこなすだけでは足りません。時には、自分の領域でないボトルネックの解消のために、その領域の担当者に対応してもらえるように動く必要があるかもしれません。人材教育担当者も人材を育成しながら、自分も同様に成長していく視点は欠かせないでしょう。

その問題に対するソリューションは合っているか?

企業として、最小のコストで最大の成果を出すには、1つ上位の目線(経営者寄りの目線)を持つということは非常に重要なのです。

現場や他部署から研修のオーダーが来た時も、そのまま受け入れるのではなく、ヒアリングや調査や問題の原因分析をしてみてください。社内の“教育コンサルタント”になったという意識で取り組んでみてください。

繰り返しになりますが、研修ありきで考えるのではなく、最適な課題設定と最適な解決策の選択は不可欠です。スタートを間違えてしまうと、どんなにインストラクショナルデザイナーやトレーナーが頑張ったところで、成果へは結びつきません。成果へ結びつかなければ、研修にかかったコストは投資にはならず、コストのままです。

研修の開催ありき、手法まで決められてご相談に来られる方には、「その問題(原因)は正しいですか?」「その問題(原因)に対するソリューションは合っていますか?」と必ずヒアリングするようにしています。研修は、「目的」ではなく「手段」であるということを忘れないでください。

また、研修は問題をすべて解決する特効薬ではありません。分析をして、最適なプランを設計することが効果を最大化する研修を実現する秘訣です。

 

※この項でお伝えしてきた考え方を「HPI(Human Performance Improvement)」といいます。インストラクショナルデザインよりも上流工程を考えることです。トレーニング部門のマネジャーや部長はインストラクショナルデザインのみならず、HPIを知った上で教育戦略を立てることが重要です。

 


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