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研修設計において、しっかりと現状分析を行うことは、どのようなメリットがあるでしょうか?
現場ニーズにより合致した研修を提供できることは言うまでもありませんが、他にも良い影響が期待できます。
今回は現状分析のやり直しを経験したトレーナーの変化について述べていきます。
前回のコラムでは、「なぜ現状分析が大切か」ということについて述べました。
現状の把握ができていないと、研修対象者の「今」立っている位置が分からないままゴールに向かって動き出し、結果として現場ニーズに合致しない研修の設計に繋がってしまいます。
では、現状分析を行うことの意味は果たしてこれだけでしょうか?
前回のコラムで、私が新入社員教育のトレーナーに再度現状分析を指示したところ、よりよい研修の提供以外でも、担当トレーナーに大きな変化が2つありました。
1つ目の変化は、担当トレーナーが研修対象者に対する認識を大きく変えたことです。
担当トレーナーは、研修対象者(新入社員)に関する情報と問題点を次のようにアップデートしてきました。
情報の量・質ともに明らかな変化が感じられます。
Before
研修対象者に関して収集した情報
- 大学の成績
- 入社後の体調面
研修対象者個々の問題点
- 入社後に体調面の不調を訴えた社員や遅刻をした社員が数名いる
- 知識の習得が遅れている社員が数名いる
- 入社前の学力について問題のある社員はいない(社員個々の知識量や社員同士の知識量の差は不明)
研修対象者全体の問題点
- 全体的に積極性が足りない
After
研修対象者に関して収集した情報
- 事前テストの結果
- 社会人基礎力の調査結果
- 大学時代のチーム活動における役割
- 営業本部の求める人材像
- その他
研修対象者個々の問題点
- 体調不良を訴えているのはAさんで原因は〇〇。遅刻者はBさんのみで2回であり、原因は夜遅くまで勉強し起きれない。他にも数名、体調面で気掛かりな社員がいる。
- 事前テストの結果から、現在の知識レベルが低く、その中でもCさん他3名は最低限の知識レベルが備わっていない
- 個々の社会人基礎力が低く、その中でもDさん他3名は特定の社会人基礎力が全く備わっていない
研修対象者全体の問題点
- 知識レベルがバラバラであり、現在の研修では効果が期待できない
- 営業本部の求める、自律して学習して成長していける社員(社会人基礎力がある程度備わっている社員)が少ない
- リーダー的な役割を担う社員がEさんのみのため、人事研修でのチーム活動が難航している
トレーナー自身が追加で情報を収集したことで、上記のように研修対象者個々人、そして新入社員全体としての問題点が以前よりも具体的に浮かび上がってきました。
それによって、現状の研修部門の行っている施策では足りない部分が多くあることが判明しました。
このように、多くの情報を収集することは、研修を受講する方々の「今」が研修部門の想像を超えた状況にあることを気づかせてくれるきっかけになります。
この後、私は担当トレーナーにアップデートした内容を他のトレーナーにも共有するように指示しました。
そして、他のトレーナーも含めて情報の見落としがないかを確認した上で、改めて問題点を整理し、研修対象者個々人、研修対象者全体に対する課題を設定することを指示しました。
2つ目の変化は、トレーナーとしてのマインドが醸成されていったことです。
当時部下にいたトレーナーの方々は、営業担当者としてのエキスパートで構成していました。
非常に真面目で、専門知識が豊富で、セールストークにも秀でており、営業担当者として成功した方々です。
しかし、研修の設計は、自身の体験をベースとしたKKD(勘・経験・度胸)や従来の研修内容の踏襲であることが多く、研修対象者の分析はほとんど行っていませんでした。
そんなトレーナー達が、ゼロベースで地道に情報収集と分析を行い、自身のこれまでの認識と分析結果とのギャップの大きさに気付いたことで、「これまでの研修内容で良いのか?」と、自ら向き合うマインドへと変化しました。
このように、研修対象者の「今」を突き詰める現状分析を行うことで、研修対象者にとって必要となる研修設計に繋がるだけでなく、トレーナー自身の成長にも大きく寄与すると考えています。
もちろん、収集する情報が多岐にわたることで、トレーナーの負荷は大きくなります。
それでも、研修対象者の「今」に真剣に向き合って徹底して分析することをお勧めします。
研修担当者として、何か感じることがたくさんあるのではないかと思います。
元教育部長ハヤカワ
早川 勝夫
外資系製薬会社にて営業を経験後、営業戦略、新製品発売、営業生産性向上、人財開発といった分野でマネジメントに従事。特に、「何のための研修か目的が分からない」という現場の違和感を原点に、自力で研修から教育システム全体を試行錯誤し、改革を推進。HPI に基づく仕組みづくりを通じて、個人と組織のパフォーマンス最大化を実現した。この現場での実践と熊本大学教授システム学での体系的な学習の経験に基づき、「課題解決は、自律的に学ぶ人財を育む仕組みとプロセス設計から始まる」という確信を持つ。
ビジネスプロセス改善やWPLの理論を、自身の現場での成功と失敗に裏打ちされた知見として提供。皆様の組織が継続的に成果を出し、人が輝き続ける仕組みづくりを「実践的に」ご支援します。
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2025/11/26
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