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「うまくいった」「失敗した」——その奥にある感情、見逃していませんか?
結果だけを追う振り返りから一歩進んで、感情に丁寧に向き合い、自分の“当たり前”を問い直す。「批判的内省」が、学びと成長の質を変えていきます。
「事実を話しているつもりでも、実は感情が織り込まれている」そんなことに気づいたことはありませんか?
例えば子どもの頃。
ちょっとした失敗をしてしまい、母親に「何があったの?」と聞かれて、つい事実とは違うことを口にしてしまった経験。
あるいは大人になってから。
嬉しかった出来事を思わず話を盛ってしまったり、悲しい経験を省略して伝えてしまった経験。
客観的に話しているつもりでも、その背景には感情があり、知らず知らずのうちに“事実”は変形してしまうことがあります。
実際、警察の捜査でも、目撃者の証言が感情に左右されるケースは少なくないそうです。
けれど裏を返せば、「感情に丁寧に向き合う」ことで、より信頼性のある事実に近づくことができる。
そのプロセスこそが、“内省”です。
仕事における経験学習でも、最初のステップは内省です。
目の前で起きた出来事をどう捉え、どんな意味を見出すのか。それは、感情とともに自分の内側を振り返ることから始まります。
その時の気持ちや、思い浮かんだ考えを思い出すことで、自分がどのように感じ、どのように判断していたかを理解しやすくなります。
時には誰かが問いかけてくれるだけで、内面を掘り下げやすくなることもあります。
そして、人は忘れやすいもの。
思いついた時にメモを取ったり、気づきを書き残しておくことで、もやもやしていた感情が整理され、新たな視点や自分の価値観に気づけるかもしれません。
「失敗」を振り返るのがつらいのは当然です。
よく「失敗は成功の母」と言われますが、正直なところ、失敗した出来事はあまり思い出したくないものですよね。
例えば、ダイエット中につい食べすぎてしまい、その後怖くて体重を測れず、気づけば開始前より増えていたというような経験。
大食いしてしまったという事実は変えられないのに、その記憶に蓋をしてしまう。振り返ることすら避けてしまう。
これは、「振り返ること=反省すること=自分を責めること」と無意識に感じてしまうからかもしれません。
でも、内省は決して自分を責めるためのものではなく、未来へつなげる“前向きな行為”です。
失敗を否定するのではなく、「今の自分を受け止めて、成長に活かす」こと。それが、内省の本質なのです。
一方で、成功した経験は振り返りやすく、誰かに話したくなるものですよね。
でも、成功にも「内省」が必要です。成功こそ、深く振り返ってみませんか。振り返るのが楽しくなると思います。
その時、なぜうまくいったのか?
もっと良いやり方はなかったか?
そう問いかけてみることで、あなたの中の“当たり前”が見えてきます。
ただし注意したいのは、成功体験は「結果」に満足してしまいやすく、深い振り返りが抜け落ちてしまうこと。
成功によって得た考え方や判断の枠組み(=準拠枠)が固定化されると、思考が浅くなってしまうこともあるのです。
そこで大切なのが、「自分の中の当たり前を疑ってみる」こと。
経験学習の権威である松尾睦先生は、これを「批判的内省」と呼んでいます。
これは、環境や時代の変化に柔軟に対応できる、“アップデートされた自分”をつくるための重要なプロセスなのです。
まずは、日常の中でふと気づいたことを、少しでも言葉にして記録してみましょう。
感情を手がかりに、出来事をたどる。
自分の思いや考えを、自分の言葉で言語化する。それをメモとして残しておく。
言語化とは、あなたらしい言葉で「思い」や「考え」を表現した上で、適切な言葉に変換する思考の作業です。
この積み重ねが、内省を習慣にする第一歩です。
職場でも、ぜひ「内省をどう習慣化するか」「批判的内省にどう高めるか」について話し合ってみてください。
次回は、経験学習の次のステップである「教訓を引き出す」方法について掘り下げていきます。
ただ出来事を振り返るだけでなく、「そこから何を学び取るか」「次にどう活かすか」を明確にするプロセスです。
ワークプレイスラーニング コラムニスト
山道弘信
素材メーカーにて日本・欧米・アジアの拠点で製造、開発、経営マネジメントを経験。全社横断プロジェクトや新組織の立ち上げにも携わり、多様な文化や価値観の中で人と組織の成長に向き合ってきた。
職場は単なる作業の場ではなく、学びと成長が渦巻く場であるという信念を持つ。
人が成長実感を得た瞬間に放つ輝きと、それが組織に与える力に魅了され、どんな職場でも学習の場になり得るという思いから「ワークプレイスラーニング(WPL)」の連載を開始。経験を通じて得た気づきを言葉にし、働く人々の学びを後押しする。
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2025/11/26
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