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イベントレポート
2025年6月6日に開催されたLPDカンファレンス2025。
今回は、現代企業に不可欠な「ワークプレイスラーニングデザイン(WPLデザイン)」セッションのハイライトをお届けします。
「人財育成は研修室の中だけで完結する」…そう思っていませんか?
変化の激しい現代において、社会人の学びの9割以上は「職場学習(ワークプレイスラーニング、WPL)」で構成されています。
本レポートでは、職場での学びを意図的にデザインし、個人の成長を組織全体の成果へとつなげるWPLデザインの真髄に迫りました。
企業の人財育成ご担当者様、組織開発ご担当者様、貴社のラーニング環境を革新し、現場が自律的に学び始めるヒントが満載です。

目次
導入|企業成長の鍵を握る「職場学習デザイン」の重要性 特別講演|松尾睦先生が語る「持続的成果につながる経験学習支援」 事例発表|全日本空輸株式会社様 パイロットの経験学習から考える「安全と成長」 コンサルタントの視点|自律的な成長を促すWPLデザインの実践
2024年10月に弊社が実施したWPL調査では、現場従業員の約7割が「職場学習」という言葉を「聞いたことがある程度」または「知らない」と回答。
重要性は認識されているものの、「熱心に取り組んでいる」と答えたのはわずか5〜6%に留まります。
このギャップの最大の要因は、「短期的業績」へのフォーカスです。
現場は結果責任を問われるため、長期的な人財育成が後回しになりがち。
上司側も部下側も「時間がない」「多忙である」という声が圧倒的に多く、意図的な介入がなければ職場学習は自然発生的に促進されません。
このような状況を打開するためには、以下の2点が不可欠です。
そして、最も重要なのは、本人の経験学習が適切に回っているかどうかです。
優秀な人財は自ら経験学習を回しますが、大多数の従業員の成長を促すためには、マネジャーや組織による支援が不可欠です。
経験学習を効果的に回すためには、従業員側の「批判的内省」「学習志向性」「仕事の意味の認識」「自主的な挑戦」の4つの視点、そして上司側の「内省の支援」「成長の支援」「自律の支援」の3つの視点からの支援が重要です。
これらが強化されれば、従業員は自律的に学習を進めることができます。

職場学習のポイントは、経験学習をいかに効果的に回すかにあります。全体をデザインした上で、どのように支援をしていくかが極めて重要です。意図的なデザインがなければ、具体的な「ハウツー」ばかりに目が行きがちになり、取り組みが有機的につながりません。明確な意図を持ったデザインこそが、職場学習を成功させるための鍵なのです。


経験学習研究の第一人者である松尾睦先生からは、「経験学習のサイクル」をいかに効果的に回し、個人の成長を促すかについて、その理論的背景と実践的な視点が語られました。
リーダーシップ研究では、優れたリーダーになる要因の7割が「チャレンジングな仕事(直接経験)」、2割が「先輩上司からの指導(間接経験)」、1割が「研修(間接経験)」であることが示されています。
ワークプレイスラーニング(WPL)は、この直接経験と他者からの指導を合わせて9割を占める重要な学習であり、間接経験をいかに直接経験に取り込むかが鍵となります。
コルブの経験学習サイクル(経験→振り返り→教訓化→応用)を実践する際、個人は現場では以下の「壁」に直面します。
特に「振り返り(リフレクション)」は、個人だけでなく集団の成長にも不可欠です。
育て上手なマネジャーには以下の特徴があります。
優れた指導者は経験学習サイクルを回せるよう個人を支援し、優れた企業はその経験学習を支援するシステムを持っています。
今回は時間の短い中、経験をどのように深い学びに変えてそれを次の実践に向けて概念化をするか、という本質的なことについてポイントを絞って先生に語っていただきました。
時折ペアで話をするセッションも簡単に設けていただき、会場の皆さんも「経験学習の世界」に入りこんでいったのではないでしょうか。
加えて次の全日本空輸株式会社様の事例にもつながるようにお話いただきました!

航空機の安全性向上に伴い、運航をマネジメントする能力がより求められるようになり、ノンテクニカルスキル向上のためCBTA(Competency Based Training & Assessment)が導入されています。
パイロットは年に数回の訓練と審査を通じて強制的に経験学習を行う機会があり、全日本空輸株式会社様(以下ANA様)ではこの経験学習の質を高めることに数年間取り組んできました。特に重要な変化点は以下の2点です。
ノンテクニカルスキル(コミュニケーション、状況認識、意思決定、チームワーク、リーダーシップ等)は、頭の中で行われるプロセスが多いため、それをどう引き出し、内省させ、教訓化するかが重要であり、これがパイロット訓練改善の理由です。
パイロットにはフライト前後にブリーフィングを行う文化があり、「振り返りの壁」は低いものの、その振り返りの質にはばらつきがありました。まさに「教訓の壁」の部分です。
そこで、より多くの「育て上手なマネジャー」を育成するため、様々な試行錯誤が重ねられています。

イベントでは、パイロットによるデブリーフィングのロールプレイが実演され、経験学習を支援するトレーニングを受けていない機長と受けている機長との明らかな違いが示されました。
【パターン❶:一方的な指導による振り返り】
副操縦士役のパイロット(森永氏)のコメントは以下の通りです。
1. 一方的な指導: 教官が一方的に話し、私が話す隙を与えてもらえませんでした。
2. 改善点の提示過多: 指摘される改善点が多すぎて、どれも心に入ってきませんでした。
3. 経験学習の不在: このような一方的な指導では、経験学習サイクルが回りません。ただ指摘されて終わったという印象で、内省も促されませんでした。
結果として、何か言いたくても「言い訳している」と思われたくない、あるいは「怒られたくない」という心理が働き、口数が少なくなり、その場をやり過ごそうとする傾向になります。
これでは、言われたことしかやらない「依存性」の高い状態に陥る可能性が高いと感じました。
【パターン❷:コンピテンシーベースでファシリテーションされる振り返り】
トレーニングを受けた機長役(青木氏)は以下の点を重視していました。
1. 心理的安全性の確保: 支援者であることを伝え、安心して話せる雰囲気を作る。
2. 状況認識のすり合わせ: 互いの認識のズレがないか確認する。
3. 要因の深掘り: 自身の反省点も示しながら、失敗の要因に自ら踏み込ませる。
4. 教訓の引き出し(成功体験への着目): 失敗場面と同じ要因でも、うまくいった場面を見つけて光を当て、本人が内省し、自力で解決策に気づくように促す。
5. 概念化と応用への示唆: 指導の「目的」を明確に伝え、行動が他のコンピテンシーを活性化させ、高品質な運航に繋がることを示唆する。
このようなやり取りは、経験学習サイクルを意識した職場学習の設計がしっかりと行われているからこそ可能です。
ANA様では、もともと経験学習の文化がありましたが、現在ではCBTAを活用し、「意図的に学習サイクルを回す仕組み」をさらに強化しています。
2021年からは、パイロット部門の企画・推進チームと乗務員全員がBIDエキスパートの認定を取得し、グランドデザインに取り組んでいらっしゃいます。
現状の課題としては、指導者層へのノウハウ展開や、地上職スタッフへのノンテクニカルスキル育成への応用が挙げられています。
今後は、これらの課題に対し、BIDの考えを活用しながら取り組んでいくとのことです。
ANA様だけでなく、航空局や他のエアラインも一体となって、経験学習の定着を進めており、安全に関する情報も惜しみなく共有し、日本のエアライン全体で安全な運航に努めているとのことです。
機長役、副操縦士役お二人の演技が素晴らしく、会場に参加された皆さんも引き込まれていました。
事後アンケートのコメントにも、「指導者の“プロフェッショナル”を感じた」「指導者がちゃんと訓練を受けるということの重要性を再認識した」「受け手側の学び取るマインド醸成も大事」「振り返りは“教わる側”と“教える側”の両者の認識がそろっていて初めて成果が出ることを実感」といった気づきが多く得られたセッションでした。
特別講演と事例発表を受け、最後に弊社からは、「持続的に成長する人と組織」を実現するWPLデザインの実践における鍵となる視点をお伝えしました。
近年、若年層は総じて成長意欲やキャリア志向が非常に強い傾向にあると言われています。しかし、情報過多の環境で育ったがゆえに、「知識を得ればできる」という誤解を抱いているケースも少なくありません。
座学で得た知識だけでは、実社会での課題解決には繋がりづらいことを、彼らが経験を通じて理解していく必要があります。
今後の成長の鍵となるのは、新卒をはじめとする若手人財がいかに「経験学習」を積み重ねていくかです。
経験学習を地道に回し続けることは、時に苦手と感じるかもしれませんが、ここをサポートしていくことが重要です。
また、AIやデジタル技術の進展が目覚ましい現代において、ノンテクニカルスキルの重要性は飛躍的に増しています。
例えば、問題解決能力、コミュニケーション能力、チームワーク、リーダーシップなどは、テクニカルスキルとは異なり、座学や指導だけで習得することは困難です。これらのスキルは、実践の中で自ら気づきを得て習得していく必要があります。
自律的な気づきを促すファシリテーション型やコーチング型の指導が不可欠となります。
経験学習を組織内で効果的に循環させるためには、そのプロセスを明確にデザインすることが極めて重要です。
私たちは、この手法を「ワークプレイスラーニングデザイン」と提唱しています。
このデザインの肝は、職場学習の全体像を可視化し、現場の従業員自身が「職場学習とは何か」「経験学習とは何か」を深く理解し、自ら考えることから始める点にあります。
本社側が一方的に作成した学習プログラムを現場に展開しても、その意図が十分に伝わらず、期待する効果が得られないことは少なくありません。
職場学習や経験学習がどのような目的を持ち、上司が何を求めているのかを現場が深く理解することで、初めて自身の行動に落とし込み、主体的に学習に取り組むことができるようになります。
ワークプレイスラーニングのデザインは、多岐にわたるステークホルダーが関わるため、難易度の高い取り組みであることは事実です。しかし、その分、大きな可能性を秘めています。
実際に、弊社がご支援したプロジェクトにおいて、営業ラインのマネジャーが自身の職場の学習デザインを描き、実践したケースでは、上司と部下の間に職場学習に対する認識のギャップがほとんどなく、非常に良好な学習環境が構築されていることが確認されています。
職場学習を成功させる鍵は、単に優れた学習デザインを描くだけでなく、そのデザインに基づいて「従業員」「ラインマネジャー」「エグゼクティブ/組織」の3者がいかに連携し、行動していくかにあります。それぞれの役割と、連携を深めるためのポイントは以下の通りです。
私たちは、この3者の連携を具体的にデザインし、実践へと繋げるためのフレームワークとして、「WPLキャンバス®」を提示しています。
これを活用することで、ワークプレイスラーニングのデザインが単なる机上の空論で終わることなく、現場で本当に「生きた学び」を創出することが可能です。

最終的な職場学習の目的は、上司が変わっても学習サイクルが回り続ける「自律的な学習」を実現することです。これは自然発生的な感覚に任せるだけでは達成が困難です。私たちは、明確な意図を持ってデザインされた状態とし、どれだけ経験学習を効果的に回していけるプロセスを踏めるかが重要だと考えています。
本セッションを通じて、変化の激しい現代において、職場学習(WPL)が人財育成の90%以上を占める重要な要素であり、これを意図的にデザインするWPLデザインが、個人の成長を組織全体の成果へとつなげる鍵であることを確認できました。
特に、経験学習サイクルを効果的に回すための理論と実践、そしてラインマネジャーの学習支援力強化と三者の連携が、WPLデザイン実践を成功させるための重要なポイントとなります。
SLHは、これらのWPLデザインの考え方を基に、貴社の「自律的に学ぶ組織」実現を支援するコンサルティングを提供しています。
WPLキャンバス®、WPLアクションマップ、WPLマクロスケジュールといった具体的なアウトプットを通じて、貴社の職場環境に合わせたWPLデザインの設計から実行までをサポートし、従業員一人ひとりが経験から学び、成長する文化の醸成を共に目指してまいります。
この記事をお読みいただき、貴社の職場学習環境の構築や、より効果的な人財育成戦略にご興味をお持ちいただけましたら幸いです。
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