コラム

【ワークプレイスラーニングを考える】
第10回 教訓を行動につなげていくための
「応用」の壁にぶつかっていませんか?

「学びの90%は職場の経験から得られる」と言われるように、日々の業務経験は私たちにとって成長の源泉です。
コルブの経験学習モデルが示す通り、人は経験を内省し、そこから「教訓」を引き出し、新たな状況に適用するというサイクルを回すことで成長します。
しかし、せっかく得た「教訓」が、次の機会に応用できない「応用の壁」に直面することはありませんか?

「教訓」を具体的な「積極的行動」へとつなげるための視点と、それを支えるマインドセットについて、私自身の経験を交えながら深掘りしていきます。

1

「教訓」から「積極的行動」への架け橋となるマインドセット

経験学習における「内省」のプロセスを経て得られた「教訓」は、私たちの行動の羅針盤となるはずです。
しかし、時にその教訓が「頭では分かっているけれど、なかなか行動に移せない」という「応用の壁」として立ちはだかることがあります。

この壁を打ち破る鍵は、従業員が持つべき「経験学習マインドセット」の中にある、「仕事の意味」と「自主的挑戦」という二つの要素にあります。

  • 仕事の意味:個人がが自分の仕事にどのような価値や重要性を見いだしているかを示し、仕事のパフォーマンスに最も大きな影響を与える心理状態とされています。
  • 自主的挑戦:自発的に挑戦的な仕事を探し、自己の成長を促進するマインドセットです。

これらのマインドセットが、得られた教訓を具体的な「積極的行動」へと昇華させる「燃料」となるのです。

2

私の経験:ルーティン業務から見出した「仕事の意味」と「小さな挑戦」

■ルーティン業務に感じた「仕事の意味」の喪失

私自身の若かりし頃の経験を振り返ってみましょう。
異動先の職場で、「君は他部署から来たので、これから1年はルーティンの保守管理業務を覚えてもらう」と言われた時のことです。当時の私は、「こんな業務は前の職場ではとっくに卒業したはずなのに、なぜ同じ業務を繰り返す必要があるんだ」と、日々の仕事に辟易していました。
まさに「仕事の意味」を見いだせていなかった状態です。

もしあの時、もっと早く経験学習の重要性を理解し、得た教訓を意識的に活用できていたら、もっと仕事を楽しめたのにと今では思います。
幸いにも、ある作業を毎日毎日見なければならない状況が、私にとって転機となりました。

 

■「批判的内省」がもたらした視点の転換

「なぜこの作業が必要なのだろう。こんな大変な作業はいっそ無くなればいいのに」という疑問から、私はその作業と工程を徹底的に観察し始めました。
これは、自身の「当たり前」を問い直し、新たな視点や価値観に気づく「批判的内省」の始まりだったと言えるでしょう。

暇を見つけては同僚の専門家に意見を聞き、こうすれば良い、こうあったらいいなという作業の改良とその工程変更のイメージを絵にしていきました。
これを宝物のように密かに机の引き出しにしまっていたのですが、相変わらず日々のルーティン業務は苦痛だったものの、少し毎日に「張り」ができてきたのを覚えています。
このイメージ図が、1年後から始まった大きな開発へとつながるとは、当時の私は夢にも思っていませんでした。

 

■小さな「自主的挑戦」が大きな成果へ

今思えば、「徹底した作業の観察は、新たな発見を生む」という「教訓」を得て、作業改良のイメージ図を日々作り上げていくという「積極的行動」に落とし込んでいたことになります
これはまさに、「自主的挑戦」の実践であったと理解できます。
そのイメージ図を本当に設備化する大きな挑戦となったのは、その後の開発プロジェクトに移行してからでしたが、日々の小さな挑戦が積み重なっていなければ、この大きな挑戦は実現できなかったかもしれません。
この経験は、私のその後の仕事に対する取り組み方を決定づけるものになったのですから不思議なものです。

3

キャリアを通じた経験学習の継続と「成長実感」

■日々の行動が「成長実感」へと繋がる

経験学習のサイクルは、決して決まった周期で回るものではありません。
日々の行動の中から学びが生まれることもあれば、自身のキャリア全体を振り返る数年単位の長期的な学習もあります。
しかし、それらは全て、日々の小さな行動が積み重なり、連なっていくことで、やがて大きな経験学習、すなわち「成長実感」へとつながっていくのです。

企業も人も大きな変化にさらされる現代において、「自ら学び進化する自律性」は不可欠です。
個人と組織が相互に価値を高め合うためには、従業員一人ひとりが「仕事の意味」を深く考え、自ら「積極的行動」を仕掛けていくマインドを持つことが求められます。
そうすることで、私たちは「応用の壁」を打ち破り、持続的な成長を実現できるでしょう。

 

■人と組織の成長を加速させる全体設計図

WPLキャンバスは、WPLグランドデザイン、つまり人と組織が未来に向かって成長していくための育成の“全体設計図”を描く際に活用できるフレームワークです。

このフレームワークは、WPLを効果的かつ効率的に推進するために押さえるべき要素を可視化します。
そして、従業員、ラインマネジャー、エグゼクティブというWPL推進の3者がそれぞれの役割を果たすことで、組織全体として学習に対して肯定的なWPL環境が整い、成果を実現できるようになります。

4

まとめ

本記事では、「教訓」を「行動」につなげるための「仕事の意味」と「自主的挑戦」の重要性について、私の実体験を交えてご紹介しました。


ワークプレイスラーニング コラムニスト
山道弘信
素材メーカーにて日本・欧米・アジアの拠点で製造、開発、経営マネジメントを経験。全社横断プロジェクトや新組織の立ち上げにも携わり、多様な文化や価値観の中で人と組織の成長に向き合ってきた。
職場は単なる作業の場ではなく、学びと成長が渦巻く場であるという信念を持つ。
人が成長実感を得た瞬間に放つ輝きと、それが組織に与える力に魅了され、どんな職場でも学習の場になり得るという思いから「ワークプレイスラーニング(WPL)」の連載を開始。経験を通じて得た気づきを言葉にし、働く人々の学びを後押しする。


◀◀【連載第9回】「学び続ける力」の育て方~成長実感と環境がつくる学習志向~

【連載最終回】成長を紡ぐワークプレイスの物語~シリーズ全10回の旅路を振り返る~▶▶

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